基板外観検査装置でプリント配線板(PCB)のはんだ接合部の3次元(3D)プロファイルを生成する際、シャドーイングや二次反射の問題が生じる。オムロンはこの問題に対処するために、主力製品である「VT-S730 3D AOI(Automated Optical Inspection:自動光学検査)」から、性能を改善したという。
基板外観検査装置でプリント配線板(PCB)のはんだ接合部の3次元(3D)プロファイルを生成する際、シャドーイングや二次反射の問題が生じる。オムロンはこの問題に対処するために、主力製品である「VT-S730 3D AOI(Automated Optical Inspection:自動光学検査)」の性能を改善したという。
オムロンオートメーションアメリカのアドバンストセンシングおよび検査ソリューション担当テクニカルマネジャーを務めるBrad Ward氏は、米国イリノイ州シカゴにある同社のProof of Concept Centerで、最新の「VT-S1080」を前に、「当社は10年程前に、3D AOIという新しい時代に入った」と語った。
「この10年間で、ハードウェアおよびソフトウェアの観点から、何が必要で何が不要か、何が機能し何が機能しないのかについて、多くの教訓を得た。この新世代品は、こうした教訓の全てを取り入れ3D AOIシステム内のハードウェアを完全なものとし、ハードウェアを越え、ソフトウェアとAI(人工知能)に焦点を当てたインダストリー4.0に移行できるように設計している」(同氏)
Ward氏は、「はんだ接合部の検査は、PCB組立ラインにおけるAOIの中で、最大の難関として知られている。そのため当社は、あらゆるはんだ接合部のより正確で信頼性が高く安定した3Dプロファイルを製造業者に提供することを目指している」と述べている。
オムロンの検査装置部門は、AOIで35年の経験を持ち、約1年前に米国市場でVT-S1080をリリースした。Ward氏は、「米国でのサプライチェーンの制約や物流の課題を克服し続ける中で、この新しいプラットフォームの現地での導入実績が、欧州やアジアで見られるような高い普及率にすぐに追い付くという期待を持っている」と述べている。
「米国では、VT-S1080はまだ市場に出始めたばかりだ。特定の市場や業界に特化しているわけでもない。だが既に、複数のシステムが機器メーカーや契約メーカーで稼働している。主にハイテク産業で使われているが、医療関係の顧客も利用している。多くの企業から関心が寄せられており、日本から機器が届くのを待ちながら、設置を進めている」(Ward氏)
Ward氏は、「3D AOIシステムは、あらゆる機能が向上するように設計された、まったく新しいハードウェアとテクノロジーだ。オムロンの高速カメラと新世代のデジタルプロジェクターを組み合わせ、さらに、高度に洗練された柔軟な照明ユニットと組み合わせることで、カラー検査と白色光検査のバランスを改善し、全ての3D機能をデフォルトで実現した。そして、新しいソフトウェアとAIによって、大量のデータを処理し、より安定し、正確で信頼できる3Dプロファイルを、はんだ接合部の一つ一つで実現している」と説明する。
これは、PCBのはんだ接合部の検査で発生するシャドーイングや二次反射の問題を克服することにつながる。
Ward氏は、これらの問題を「同じコインの裏表のようなもの」と表現する。「シャドーイングとは、照明の光が思うように当たらないことだ。二次反射はその逆で、照明が隣の部品に当たってしまい、収集しようとしている3Dデータに乱れが生じる現象を指す」(同氏)
Ward氏は、「VT-S1080は、これらの問題を克服するために特別に設計され、実際にそれを実現している。誤判定率を下げ、欠陥検出能力を向上させることができた」と説明した。
VT-S1080は、プラットフォームの寿命がかなり長くなることが予想されるという。Ward氏は「例えば新しいビジョンハードウェアが利用可能になった場合、現世代のカメラを次世代のものと交換することができるなど、より簡単かつ容易にアップグレードができるように設計されている」と述べた。
「また、オムロンの産業用オートメーション機器も数多く搭載している。つまり、予知保全、トレーサビリティー向上、機器からのデータ取り出し、他の機器との接続性の向上など、オムロンの技術で制御できることは全て実現させる」(同氏)
オムロンは、新しい3D AOIシステムによって、「ハードウェアへの集中をやめ、より多くのソフトウェア、特により多くのAIに開発時間と資源を投入し、自動検査プロセスのレベルを押し上げ続けることができると考えている」という。
AIのアップグレードについては、Ward氏は、「慎重に選択されるだろう」と述べる。「できることは幅広いが、何をすべきか、何をするのが安全か、ということが問われる。AIを導入し判断させることができるからといって、それが正しい判断や責任ある行動とは限らない。われわれは、AIを導入しこのような判断を下す際には、非常に系統的なアプローチを取っている」としている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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