東京大学は、純青色発光量子ドットを高精度かつ無欠陥で合成し、ディスプレイ発色の国際規格「BT.2020」が定める「純粋な青色(467nm)」に極めて近い発光波長(463nm)を実現した。
東京大学大学院理学系研究科化学専攻の中村栄一特別教授らによる研究グループは2022年11月、純青色発光量子ドットを高精度かつ無欠陥で合成し、ディスプレイ発色の国際規格「BT.2020」が定める「純粋な青色(467nm)」に極めて近い発光波長(463nm)を実現したと発表した。
次世代ディスプレイ技術として、量子ドット(QD)を用いた発光ダイオード(QD-LED)が注目されている。QDは数nmから数十nmの結晶構造をしており、材料や結晶サイズを変えることで容易に発光波長の制御ができるという。
QD材料としてこれまでは、カドミウム(Cd)系が用いられてきた。近年は色純度の高い「ペロブスカイトQD」が注目されている。ただ、ペロブスカイトQD材料でも、赤色と緑色の性能改善は進むが、青色は合成が難しく、安定性も悪いという課題があった。
研究グループは今回、QD調製法について基本的な発想を転換した。従来は反応温度制御によるトップダウン型により合成してきた。この方法だと、QDのサイズや構造をそろえるのが極めて難しかったという。そこで、原子と分子から組み上げていくボトムアップ型の「自己組織化による精密合成」を新たに開発した。これによって、一辺当たり4つ、合計64個の鉛原子からなる立方体の純青色ペロブスカイトQD(論文ではQD4と呼ぶ)を合成することに成功。発光波長463nmで半値幅15nm、蛍光量子収率97%という、純青色に極めて近い発光を実現した。
合成したQDを用い、山形大学の城戸淳二教授や千葉貴之助教と共同で、QD-LED素子を作製し、電流を注入した。この素子では発光波長464nm/半値幅15nmのLED発光を観測したという。
さらに、単分子原子分解能時間分解電子顕微鏡法(SMART-EM)という分析手法を用い、ナノ結晶の構造や表面の配位子の位置を、原子レベルの精度で初めて解明したという。そして、このQDが64個(4×4×4)のPb原子で構成される、一辺が約2.5nmの立方体であることを決定した。
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