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可視・電波透過性が高い透明反射遮熱フィルム開発ガラス窓に応用、省エネ社会実現へ

東京大学は、省エネガラス窓に応用できるフレキシブルな「透明反射遮熱フィルム」を開発した。可視光や電波の透過性が高く、熱線を遮る能力にも優れている。5G(第5世代移動通信)で用いられるマイクロ波帯域の電波を遮ることも無いという。

» 2022年10月24日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

酸化物半導体ナノ粒子の近赤外表面プラズモン技術を応用

 東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻/電気系工学専攻の松井裕章准教授らによる研究グループは2022年10月、省エネガラス窓に応用できるフレキシブルな「透明反射遮熱フィルム」を開発したと発表した。可視光や電波の透過性が高く、熱線を遮る能力にも優れている。5G(第5世代移動通信)で用いられるマイクロ波帯域の電波を遮ることも無いという。

 窓から侵入する赤外光(熱線)を遮ることは、省エネにつながることから、ビルや住宅、自動車などの分野で、さまざまな研究がなされている。遮熱性能を有するガラス窓としてはこれまで、「酸化物半導体ナノ粒子」や「Ag系多層薄膜」を用いた方法が提案されてきたが、それぞれ課題もあったという。

 研究グループは今回、透明導電膜として知られる「Sn添加In2O3(ITO)」を用いた。粒子サイズが15nm程度のITOナノ粒子は、近赤外領域で強い表面プラズモン共鳴を示すという。この現象は10%のSn原子がITOナノ粒子内へ均一に添加されて、ナノ粒子自体が金属的性質を持つことに由来しているという。しかも、ITOナノ粒子表面に分子リガンドが存在するため、ITOナノ粒子同士は結合せずに、2nm程度のナノ粒子間距離を維持した状態を保っている。

左はITOナノ粒子溶液における近赤外領域の減光度スペクトル、中央はITOナノ粒子のSTEM像とO-K線におけるEDXの2次元マッピング像、右はIn-L線とSn-L線におけるEDXの2次元マッピング像 出所:東京大学

 研究グループは、試作したITOナノ粒子薄膜について、可視光領域の光学特性(透過率、反射率)を評価した。この結果、可視光の透過率は全波長領域で75%以上となり、反射率は20%以下であった。ITOナノ粒子薄膜の曇り度合いを示す透過ヘーズ率は3%以下で、可視光の散乱はほとんどなかったという。

左はITOナノ粒子薄膜の赤外領域における反射率と透過率のスペクトル、右はITOナノ粒子薄膜の可視透明性と原子間力顕微鏡(AFM)像 出所:東京大学

 ITOナノ粒子薄膜は、近赤外領域で60%程度の高い反射率および低い透過率となった。ITOナノ粒子薄膜の表面および断面の局所構造形態を走査型電子顕微鏡で観測したところ、単一ナノ粒子は3次元積層されていることが明らかとなった。

 また、ITOナノ粒子薄膜の3次元電磁界解析によって、薄膜表面近傍のナノ粒子間界面に強い電場増強が観測された。このことから、近赤外領域における高い反射性能は、ナノ粒子間界面での強い光電場増強と密接に関係していることが分かった。

左上はITOナノ粒子薄膜の赤外領域における反射率と透過率のスペクトル、右上はITOナノ粒子薄膜の表面形態のSEM像、右中はナノ粒子薄膜の光散乱と光電場増強の模式図、下は近赤外領域におけるナノ粒子間界面に形成された電場増強度の可視化分布 出所:東京大学

 試作したITOナノ粒子薄膜の熱線に対する遮熱性能も調べた。赤外線(100W、2500K)を照射し、断熱ボックス内の空気温度について時間的な変化を測定。この結果、ITOナノ薄膜を付与することで、ボックス内における空気温度の上昇率を低く抑えることができた。これは、ITOナノ粒子薄膜に熱線を遮る能力があることを示すものだという。

左は100Wの赤外線ランプ照射に伴う熱線遮蔽(しゃへい)の性能評価に向けた実験の模式図と写真、右は赤外線照射下におけるボックス内の空気温度の時間依存性 出所:東京大学

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