東京理科大学や横浜国立大学、物質・材料研究機構(NIMS)らによる研究グループは、2000℃以上という極めて高い温度に耐えられる、ジルコニウム(Zr)−チタン(Ti)合金ベースの「炭素繊維強化超高温セラミックス複合材料(C/UHTCMC)」を開発した。
東京理科大学や横浜国立大学、物質・材料研究機構(NIMS)らによる研究グループは2022年11月、2000℃以上という極めて高い温度に耐えられる、ジルコニウム(Zr)−チタン(Ti)合金ベースの「炭素繊維強化超高温セラミックス複合材料(C/UHTCMC)」を開発したと発表した。
時速約6200km(マッハ5)という極超音速で飛行する航空機体の表面温度は、数千℃に達するといわれている。これに耐えうる材料としては、超高温セラミックスと炭化ケイ素の複合材料が注目されている。ところが、ケイ素を含む化合物は、極めて高い温度環境において、状態変化や化学変化などによる材料劣化が懸念されている。
そこで研究グループは、ケイ素を含まない新規複合材料「C/UHTCMC」を溶融含浸法によって合成し、その特性を詳しく調べた。具体的にはZrとTiの含有率を変えた3種類のC/UHTCMCを作製した。ZrとTiの組成比率がそれぞれ、20:80の「Z20」、36:64の「Z36」、80:20の「Z80」である。
これらを「ノズル間距離150mm、熱流束2MW/m2」「同100mm、4.54MW/m2」「同80mm、6.68MW/m2」と、異なる3つの条件でアーク風洞試験を行い、各材料の消耗について評価した。実験結果により、Zrの含有量が増えると、試験後に材料の厚さが増し、表面に形成される酸化物の融点も上昇することが分かった。また、複合材料の表面に生成された液相が外表面に流れて、複合材料の酸化がさらに促進されることも明らかになった。さらに、Zrを多く含んだ炭化物の方が、Tiの含有率が高い炭化物よりも、複合材料の劣化を抑えられることを確認した。
次に、材料表面に形成された酸化物を評価した。TiとZrの酸化物は主に、「TiO2固溶体」「ZrTiO4固溶体」「ZrO2固溶体」であり、これらの物質は複合材料のさらなる酸化を抑えることが分かった。特に、Z80は超高温環境下において減少量が少なく、耐酸化性も高いことから、耐熱材料に最も適していると判断した。
今回の研究成果は、東京理科大学大学院工学研究科機械工学専攻の小出士純氏(2022年修士課程1年)、同大学工学部機械工学科の井上遼講師、同大学先進工学部マテリアル創成工学科の新井優太郎助教、横浜国立大学大学院工学研究院システムの創生部門の長谷川誠教授、物質・材料研究機構(NIMS)の西村聡之博士(構造材料研究拠点接合・造型分野構造用非酸化物セラミックスグループ グループリーダー)らによるものである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.