モビリティ市場に関しては、同社は自動車の高機能化に関する「In Car領域」と、ドローンやロードサイトユニット、充電ステーションなどの「Out Car領域」に分けて捉えている。In Car領域では、xEVに加えADAS(先進運転支援システム)をはじめとした自動運転技術の普及が本格化する中、データ量の増加および制御の複雑化によってECUの重要性が増加し、「高性能で信頼性の高い電子部品の需要拡大も期待できる」とした。
Out Car領域では今後、MaaS(Mobility as a Service)のように乗り物を起点としたサービスの拡大、ロボタクシーや超小型モビリティなどの新たな移動手段などに関し「事業機会の探索を行っている」と説明した。
In Car領域では、電動化の進展に伴い、MLCCの他、フィルムコンデンサーなどの需要増を見込む。中島氏は「当社のフィルムコンデンサーは高温対応に優れている。今後、自動車内の電圧が上昇するにつれ熱対応が必要になってくると思われ、SiC(炭化ケイ素)とのセットで成長していくことを期待している」と語った。また、自動運転向けではMEMS慣性力センサーに注力。性能面での強みに加え、「自動運転のレベルが上がるにつれ、必要数は増加していることから、今後の機能デバイスの売上高成長に寄与することを期待している」とした。
中島氏はさらに、「これからのモビリティ市場は、技術革新の加速や新規参入による業界構造の変化などが予想される」と説明。「多様化する顧客要求を的確に把握し、対応していくためには、自動車市場や技術トレンドへより一層の理解が不可欠だ。ムラタは幅広い顧客との強固な関係を活用し、ニーズの先読みを行うとともに自動車そのものを分解することで、設計思想や部品点数の把握に努め、製品開発や需要予測を強化。伸びゆく市場に対して競争優位性を確立していく」と強調した。
中島氏の社長就任以来、同社は「3層ポートフォリオ経営」を掲げている。今回、中島氏はこの取り組みの背景についても説明した。同社は、1980年代、AV機器の発展にあわせ、コンデンサー、インダクターの軽薄短小化という技術革新によって1層目に当たる標準品ビジネスの事業基盤を形成。さらに、1990年代以降は携帯電話の普及/発展によって顧客とのすり合わせを行うビジネスモデルが創出され、2層目にあたる高周波モジュールなどの用途特化型ビジネスが成長してきたという。
そして2020年代からは5Gの普及などによってスマホだけでなく、医療ネットワークや工場の予防保全、クルマの自律走行などアプリケーションも多様化。3層目にあたる、ハードウェアとソフトウェアと組み合わせたソリューションとして提供する必要が出てきている、としている。中島氏は「われわれが率先して事業領域を広げていくだけではなく、顧客の要求が変わってきた。部品メーカーの部品の定義が1層目、2層目、3層目と変わっていく、あるいは部品メーカーの定義が今後変わっていくと考えている」と述べた。
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