大陽日酸は、東京農工大学やノベルクリスタルテクノロジーと共同で、ハライド気相成長(HVPE)法により、6インチウエハー(サファイア基板)上に酸化ガリウム薄膜を形成することに成功した。
大陽日酸は2022年3月、東京農工大学やノベルクリスタルテクノロジーと共同で、ハライド気相成長(HVPE)法により、6インチウエハー(サファイア基板)上に酸化ガリウム(β-Ga2O3)薄膜を形成することに成功したと発表した。次世代EV(電気自動車)や各種インバーターなどの省エネにつながる、高耐圧で高出力、高効率(低損失)のパワーデバイスを、安価に製造することが可能になる。
β-Ga2O3は、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)に比べ、より大きなバンドギャップを持つことから、パワーデバイス用として注目を集める半導体材料である。2021年にはノベルクリスタルテクノロジーがHVPE法を用いて、4インチβ-Ga2O3エピウエハーの開発に成功し、製造販売を行っている。
ところが、HVPE法を用いた成膜装置の実用機は、対応できるウエハーサイズが2インチや4インチといった小口径に限られ、ウエハーを1枚ずつ処理する枚葉方式であった。今後、β-Ga2O3パワーデバイスを本格普及させるためには、6インチ以上の大口径ウエハーに対応でき、複数のウエハーをまとめて処理するバッチ式の量産装置を開発する必要があるという。
大陽日酸はこれまで、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/次世代パワーデバイス向け酸化ガリウム用の大口径量産型エピ成膜装置の研究開発」プロジェクトで、β-Ga2O3薄膜を形成するための大口径量産型エピ成膜装置(量産装置)の開発に取り組んできた。
そこで大陽日酸は、「6インチウエハー対応の枚葉式HVPE装置」を開発した。この装置は、成膜条件の最適化や独自の原料ノズル構造を採用しており、サファイア基板を用いた6インチテストウエハー上へ、β-Ga2O3薄膜を形成することに世界で初めて成功したという。
形成したβ-Ga2O3薄膜については、膜厚分布が±10%以下を達成するなど、面内で均一な成膜が可能であることを確認した。今後は、6インチβ-Ga2O3ウエハーを用いてエピ成膜を行い、β-Ga2O3薄膜の電気特性や膜中に存在する欠陥を評価して、高品質のβ-Ga2O3エピ成膜を可能にする技術を開発していく。2024年度には量産装置の製品化を目指す考えだ。
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