九州大学と大阪大学の研究グループは、量子ドットを2行2列に配列したアレイで、電子スピンの制御に用いる微小磁石について、その形状を最適化する設計手法を開発した。大規模な半導体量子コンピュータの開発に弾みをつける。
九州大学大学院システム情報科学研究院の木山治樹准教授と大阪大学産業科学研究所の中村駿吾大学院生(研究当時)、大岩顕教授の研究グループは2022年12月、量子ドットを2行2列に配列したアレイで、電子スピンの制御に用いる微小磁石について、その形状を最適化する設計手法を開発したと発表した。大規模な半導体量子コンピュータの開発に弾みをつける。
微小な半導体(量子ドット)に閉じ込められた電子スピン量子ビットは、量子コンピュータの実現に向けて、有力なハードウェア候補の一つとなっている。実用化に向けては、「電子スピン量子ビットの高精度制御」や「量子ドットの集積化」といった研究が進められている。特に、大規模集積化を実現するには量子ビットを2次元的に配列する必要がある。しかし、量子ドット2次元配列ではこれまで、微小磁石を用いた電子スピン制御が実現できていなかったという。
そこで研究グループは、微小磁石が発生させる磁場分布のシミュレーションを行い、2行2列量子ドット配列用の微小磁石について、形状を最適化した。これにより、シリコンを材料とする量子ドットでは99%以上の精度となる見込みで、誤り耐性に必要となる高精度の制御が可能になるとみている。
研究グループは今後、2行2列量子ドット配列用と微小磁石を試作し、電子スピン制御の実現とその精度について評価を行う。さらに大きな配列でのスピン制御の研究にも取り組み、20〜30年後には半導体量子コンピュータの実現を目指す考えである。
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