大阪公立大学とイリノイ大学、エア・ウォーター、東北大学および、ジョージア工科大学の研究グループは、半導体材料「3C-SiC」(立方晶の炭化ケイ素)が、結晶の純度や品質を十分に高めることで、理論値相当の高い熱伝導率を示すことが分かった。
大阪公立大学と米イリノイ大学、エア・ウォーター、東北大学および、米ジョージア工科大学の研究グループは2022年12月、半導体材料「3C-SiC」(立方晶の炭化ケイ素)が、結晶の純度や品質を十分に高めることで、理論値相当の高い熱伝導率を示すことが分かったと発表した。
SiCは、次世代パワー半導体の材料として注目され、実用化が進んでいる。そのほとんどは結晶が六角柱の形をした「4H-SiC」や「6H-SiC」であった。これらに比べ「3C-SiC」は結晶構造が単純で、熱伝導率が高いと期待されている。ところが、海外で製造された3C-SiCは熱伝導率が90W/m・Kで、6H-SiCの実測値(320W/m・K)より低い値だという。
今回は、エア・ウォーターが開発した3C-SiC結晶を用い、熱伝導率の評価と原子レベルの解析を行った。具体的には、まずシリコン(Si)基板上に厚さ100μmの3C-SiCを形成。その後、Siを除去し3C-SiC自立基板を作製した。
その上で、TEM(透過型電子顕微鏡)とX線ロッキングカーブ(XRC)法を用い、原子配列と結晶性の評価を行った。ナノレベルの結晶欠陥は観察されず、原子が規則的に配列していることを確認した。また、XRCピークは狭く、結晶が高品質であることも分かった。
続いて、時間領域サーモリフレクタ法を用い、3C-SiC自立基板と厚さ1μmの3C-SiC薄膜について、熱伝導率を評価した。この結果、自立基板では、500W/m・Kを超える等方性の高い熱伝導率が得られた。大口径材料の中ではダイヤモンドに次ぐ2番目に高い熱伝導率だという。また、厚さ1μmの3C-SiC薄膜は、同じ厚さのダイヤモンドに比べ熱伝導率が高いことも分かった。さらに、3C-SiC/Si界面の熱コンダクタンスは、異種材料界面中で最も高い値を示したという。
3C-SiCはダイヤモンドに比べ低コストであり、大口径のウエハー作製が可能なため、他の半導体材料と組み合わせれば、高放熱性のデバイスを実現することができるという。また、シリコン基板上に結晶形成が可能であることや、3C-SiC/Si界面の熱伝導率が高いことなども大きな特長である。
今回の研究成果は、大阪公立大学大学院工学研究科の梁剣波准教授や重川直輝教授、イリノイ大学のZhe Cheng博士やDavid G.Cahill教授、エア・ウォーターの川村啓介博士、東北大学金属材料研究所の大野裕特任研究員と永井康介教授および、ジョージア工科大学のSamuel Graham教授らによるものである。
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