安井氏は、2023年以降の半導体製造装置市場は前年比21%減、2024年は2023年比で11%増になると予測した。「2023年はメモリが調整の年になり、メモリ市場は半減すると予想している。また、アメリカ地域の景気の減速、在庫調整などが原因で2023年は市場が落ち込むであろう。2024年は自動運転やAI(人工知能)の発展によるデータセンター市場の拡大により半導体の生産能力への投資が拡大し、半導体製造装置市場も成長するだろう」(安井氏)
中名生氏は、2023年の半導体製造装置市場は前年比20%減、2024年は2023年比で8%増になると予測した。理由については「2019年の半導体市場の縮小と同様に2023年もメモリの調整で市場が落ち込むだろう。2020年から2021年にかけて巣ごもり需要でスマートフォンやPC関連の需要が増えたが、メモリの需要は2021年から下降傾向にあり、2023年中盤まで続くと予測している」とし、今後の半導体需要については「半導体サイクルや投資サイクルが変化しており、ハードウェアよりもソフトウェアが市場をけん引するようになるだろう」と考察した。
石野氏は、2023年の半導体製造装置市場は前年比31%減、2024年は2023年比で23%増になる予測だ。同氏は「2023年はスマートフォンやPC関連で200億米ドル、米中対立で100億米ドルの合計300億米ドル市場が縮小すると想定している。ただ、予測した後に発表された中国の設備投資によるプラス影響を50億米ドルと予測すると実際はもう少し緩やかな縮小に収まる可能性もある。2024年、2025年はインドのスマートフォン市場やエアコン市場が発展し、中国に次ぐ市場に成長することで市場が回復するだろう」と説明した。また、国内企業が市場に与える影響について「NTTの掲げるIOWN構想が実現すれば、低遅延で世界中がインターネットに同時接続することができるようになる。今後2〜3年間で大きな市場の変化を起こすだろう」と述べた。
長谷川氏は、2023年の半導体製造装置市場は前年比15%減、2024年は2023年比で16%増になると予測した。「メモリ市場の調整や米中対立が原因で市場は縮小するものの、半導体関連の補助金や微細化トレンドにより、想定より市場の縮小は控えめになると考えている。2023年後半からは在庫調整でのマイナス影響よりも、リモートITの発展や身の回りの事象のデータ化による需要が勝り市場が回復していくと予測している」(長谷川氏)
セミナーの最後には各人から未来を担う学生や日本政府に向けて一言メッセージが送られた。
安井氏は「半導体の技術は世界中で使われている。成長がこんなに見えている業界は他にない。」と述べた。中名生氏は「私たちが一番共有すべき価値観は、半導体は世界人々のこれからの幸せにつながる技術であるということだ」と強調。
石野氏は「半導体は世界人口約80億人の生活を支えている技術だ。半導体製造装置業界は半導体を安定的に供給していく役割を担っている」と語り、長谷川氏は「現在、補助金の対象になっているのは外資系企業が多いが、日本企業(材料系など)の支援も行ってほしい」と述べた。
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