さらに、エンドポイント機器を使用環境に対し、自律的な対応ができる学習システムも構築した。AIを搭載した機器は、同じモデルで学習させても、機器の設置場所やセンサーのばらつきによって認識精度が変わってしまうという課題がある。野瀬氏は「例えばカメラの構造上の違いや、周辺の光の当たり方の違いといった要素で、認識精度を高いまま維持できる機器もあれば、低くなってしまう機器もある。こうしたばらつきが生じてしまうことが実用上の課題になっていた」と述べる。
そこで今回、エンドポイント機器でAIを実行しつつ、「追加学習」を用いることで、環境の変化に対応できる学習システムも構築。具体的には、精度が低くなってしまったAIモデルを、使用環境に合わせて最適化し、精度を復元させるという技術を開発して応用した。「AIの実行を止めずに、フレキシブルなDRPの特性を生かして追加学習ができることがポイントだ。これにより、追加学習の時間を別途確保したり、データを追加で収集したりといった手間がなくなり、運用が格段に容易になる」(野瀬氏)
NEDOの「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」プロジェクトでは、ルネサスの他、東京工業大学、SOINN、三菱電機が連携して、高度なAI処理を低消費電力で実行できる、DRPベースの組み込みAIチップの実用化を目指している。今回の成果を基に、NEDOと各社は、同技術の詳細な評価と実証実験を進める予定だ。ルネサスは、今回の成果をいち早く実用化につなげるべく、IoT・インフラ事業向け製品への適用を計画しているとする。
NEDO IoT推進部の主任である岩佐匡浩氏は、「AIチップをIoT機器に組み込む際の課題の一つとして、AI処理を行うときの発熱(消費電力)があった。今回の成果により、幅広い機器へのAIチップの組み込みが期待される」と語った。
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