FWAサービスは、調査した100カ国以上に及ぶ通信事業者(CSP)の中で、78%が提供している。日本でも3事業者が提供中である。特にCSPの約3分の1は5GによるFWAサービスで、その比率は急速に高まる。また、5G FWAを提供する事業者の48%が速度別料金制度を採用している。地域別にみると、北米では全事業者がFWAサービスを行い、90%が速度階層別料金を導入しているという。
FWAの接続数も急拡大する。全世界の接続数は2028年に3億件となる見通し。このうち、5GベースのFWAは約2.35億件に達すると予測している。インドにおける大規模な「5G FWA展開計画」などが市場をけん引することになりそうだ。
同レポートでは、日本における5Gの現状についても紹介した。5G基地局数は14万6000局で、このうちSub-6局は6万8000局とまだまだ少ない。東京都内における5G捕捉率は平均で7.3%、山手線内でも17%強にとどまる。また、5Gスループット(下りリンクのビットレート)は165.1Mビット/秒、Sub-6局の密度は0.5、Sub-6でマッシブMIMOの割合は10%である。これらの数値は韓国や台湾といった近隣諸国に比べるとはるかに小さいという。
藤岡氏は、「世界市場の70〜80%がSub-6/マッシブMIMOを展開中である。世界中がここに開発資源を集中している。日本の課題はSub-6/マッシブMIMOへの対応が遅れていることだ」と指摘する。その理由として「設備投資の抑制」や「新たなアンテナポールの設置が必要となる」ことなどを挙げた。
5G技術については、SA(スタンドアロン)が中心になりつつある。2023年よりNR-DC(ミリ波帯を含む)の利用が始まるという。5G普及のカギを握るアプリケーションの1つとして現実世界と仮想世界を融合する「XR(X Reality)」技術を挙げた。そして、XRの普及には「デバイス」「アプリケーション」「ネットワーク/エッジ/クラウド」のあらゆる部分が成熟していく必要があると指摘した。
例えば、無線アクセスネットワークの領域では、トラフィックの増加に対応するため、世界平均で2030年には5GHzの帯域幅が必要となる。これを実現するにはSub-6に加え、ミリ波帯の利用が不可欠となる。
世界におけるモバイルトラフィック量も急増する。2021年第3四半期(7〜9月)からの1年間で、データトラフィック量は38%も増加した。2028年には、モバイルデータトラフィックの中で約69%を5Gが占めると予測した。また、27%はFWAによるものだという。
スマートフォン1台当たりのデータ利用量も増加する。現在は世界平均で月間15Bバイトである。これが2023年末には19Gバイトとなり、2028年末には46Gバイトに増えると予測されている。地域別にみると、北米や北東アジアでは、2028年末に月間平均55Gバイトとなる見通し。データ量の多いコンテンツの登場などが、その主な要因である。
特にデータトラフィックの割合が大きいアプリケーションとして「動画」を挙げた。2022年は既に71%を占め、2028年には80%まで高まるとみられている。中でも、「YouTube」や「TikTok」といったソーシャルメディアの動画が大きな比率を占めている。「Netflix」などストリーミングビデオオンデマンドの視聴も、動画トラフィックの増加要因になっているという。
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