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リチウムイオン電池における溶媒和構造を可視化京都大学とパナソニック

京都大学とパナソニックホールディングスは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、リチウムイオン電池における溶媒和構造を可視化することに成功した。

» 2022年12月26日 16時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

より高性能なリチウムイオン電池の開発を可能に

 京都大学大学院工学研究科の小林圭准教授と山田啓文教授(研究当時)らは2022年12月、パナソニックホールディングス テクノロジー本部の山岸裕史主任研究員、井垣恵美子課長らと共同で、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、リチウムイオン電池における溶媒和構造を可視化することに成功したと発表した。

 リチウムイオン電池の性能は、リチウムイオン(Li+)が電解質中で溶媒および負イオンに包まれる溶媒和構造や、電極表面で溶媒和が外れてLi+が電極に入り込みやすいかどうかで決まるという。このため、電極(固体)と電解質(液体)との界面(固液界面)で、Li+の溶媒和構造や脱溶媒和の様子を測定し最適化すれば、より高性能なリチウムイオン電池の開発につながるという。

 そこで今回は、プロピレンカーボネート(PC)を溶媒とし、リチウム塩(LiTFSI:リチウムビス(トリフロロメタンスルホニル)イミド)を溶かした電解質中のLi+が、負に帯電したマイカ基板表面の近傍でどのような溶媒和構造となっているかを、周波数変調AFM(FM-AFM)で測定した。

 実験ではまず、LiTFSIを含まないPC中で、マイカ基板表面近傍の2次元的な力分布を測定した。この結果、基板表面近傍で約0.5nm間隔の明るい縞を検出した。これはPC分子が基板表面で均一な層構造を形成していることを示すものだという。

 続いて、0.8M(1リットル当たり0.8モル)のLiTFSIを含むLiTFSI-PC溶液中で測定すると、基板表面から約0.8nmの位置に明るい縞が現れた。これは、Li+が3つか4つのPC分子に囲まれて約0.8nmの溶媒和構造を形成しているためだという。これらは、分子動力学シミュレーションによる計算結果と一致した。

 さらに、3.6MのLiTFSIPC溶液中で測定すると、基板表面から約1.4nmの位置に明るい縞が現れた。これはLi+が、3つか4つのPC分子および、負イオン(TFSI-)に囲まれて、より大きな溶媒和構造になったことを示すものだという。

上図はFM-AFMで測定したマイカ表面近傍における周波数シフトマップ、下図は溶媒和構造の模式図(いずれも左からPC、0.8M LiTFSI-PC溶液、3M LiTFSI-PC溶液)(クリックで拡大) 出所:京都大学他

 今後は、実際のリチウムイオン電池に用いられている溶媒や電極を用いて、溶媒和構造や脱溶媒和の様子を分子スケールで測定し、より高性能なリチウムイオン電池の開発を目指すことにしている。

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