京都大学工学部/大学院 工学研究科は2023年1月17日、助教の村井俊介氏らの研究グループが、高効率で指向性ある蛍光を放つ「ナノアンテナ蛍光体」の作製に成功したと発表した。
京都大学は、2023年1月17日、二酸化チタンを使用することで、高効率かつ高い指向性を備えた「ナノアンテナ蛍光体」の作製に成功したと発表した。この技術を照明に利用することで、照明をより明るく省エネ化できるという。
ナノサイズの粒子を基板上に周期的に並べた2次元構造は、光を平面内に強く閉じ込めたり、特定の方向へ集めたりする性質があり、「ナノアンテナ」と呼ばれている。今回の成果を発表した京大工学研究科助教の村井俊介氏、同研究員のFeifei Zhang氏、同研究員の愛知広樹氏、同教授の田中勝久氏らの研究グループは、ナノアンテナと蛍光体を組み合わせた「ナノアンテナ蛍光体」を開発し、光源や照明への応用を目指した研究を進めている。
同研究グループは、これまでに、黄色蛍光体基板の上にナノアンテナを作製し、青色レーザーと組み合わせた、指向性白色光源を設計/試作。同試作品は、蛍光体から放たれる黄色光が基板表面に作製されたナノアンテナの作用を受けて前方方向に集められ、青色レーザー光と均一に混ざることで、前方方向へ指向性を持った白色光を生成するというものだ。
同研究グループによると、これまでの研究では、光を強く発散し、高い指向性が得られる金属アルミニウム粒子からなるナノアンテナを使用していたが、アルミニウムは可視光を吸収するため、青色レーザー光および黄色蛍光が弱くなってしまう問題と、光吸収に伴う試料過熱の問題があったという。
そこで同研究グループは今回、金属アルミニウムに変わる材料として高屈折率かつ低光吸収材料である二酸化チタンを使用。まず、金属アルミニウムナノ粒子と同じ大きさの二酸化チタンナノ粒子を同じ周期で並べたナノアンテナ蛍光体を試作した。
ただ、この試作では光吸収は抑えられたものの、二酸化チタンナノ粒子の光散乱強度がアルミニウムナノ粒子に比べて劣るため、全く蛍光の指向性が得られなかったという。そこで、計算機シミュレーションを用いて最適構造を探り、周期およびサイズともにアルミニウムに比べてひと回り大きなナノアンテナを設計/試作したところ、アルミニウムに迫る高い蛍光指向性と低吸収が両立するナノアンテナ蛍光体の作製に成功したという。
同研究グループはリリースで、「光吸収の低いナノアンテナ蛍光体は、レーザーで照射した際の温度上昇が抑えられるため高輝度が必要となる応用に有利だ」と説明。今回の研究で、設計次第で更に正面への蛍光強度が高いナノアンテナ蛍光体も実現可能であることが示されたことから、今後、限界に迫る特性を持つナノアンテナ蛍光体の設計/開発に取り組むとしている。
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