ソニー、dToF方式のSPAD距離センサーを開発:光子検出効率は業界最高レベル
ソニーセミコンダクタソリューションズは、光子検出効率が28%と高いdToF(直接Time of Flight)方式のSPAD距離センサー「IMX611」を開発、サンプル出荷を始める。スマートフォンに向けた製品で、高い測距性能と消費電力の削減を可能にした。
ソニーセミコンダクタソリューションズは2023年3月、光子検出効率が28%と高いdToF(直接Time of Flight)方式のSPAD(Single Photon Avalanche Diode)距離センサー「IMX611」を開発、サンプル出荷を始める。スマートフォンに向けた製品で、高い測距性能と消費電力の削減を可能にした。
IMX611は、独自のSPAD画素構造を採用したセンサー。裏面照射型のSPAD画素を用いた画素チップの下に、信号処理などを行うロジックチップを配置して積層、Cu-Cu接続により1画素ごとが電気的につながった構造になっている。これにより、高い開口率を維持しつつSPADとしては10μm角という微細な画素サイズを実現した。
その上、画素には2つの工夫を施した。1つは、光の入射面に凹凸を設け、入射光を回折させることで吸収率を向上させた。もう1つは、画素内のアバランシェ領域の設計を最適化することで、増倍現象を効率的に発生させたことである。これらの工夫により、940nmの波長使用時において、スマートフォン用SPAD距離センサーとしては業界最高となる28%の光子検出効率を実現できたという。
IMX611の外観と構造図(クリックで拡大) 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ
さらに、画素チップとロジックチップを積層したことで、SPAD画素に入力されたRAWデータを距離情報に変換して出力するまでの処理をセンサー内部で行える。これにより、後段で行っていた演算処理の負荷を軽減でき、システム全体の設計も簡素化することが可能になる。
IMX611は、イメージサイズが対角2.2mm(1/8.1型)で、有効画素数は約2.3万画素(140×170画素)、SPADユニットセルサイズは10.08×10.08μmである。測距精度は誤差0.1%以内(30フレーム/秒、室内撮影時)。消費電力は長距離モード(8m)の場合にセンサー部が110mW、レーザー光源や信号処理を含むシステム全体では160mW。同様に短距離モード(3m)の場合には、それぞれ40mWと85mWとなった。サンプル価格は1000円。
SPAD ToF方式距離センサーの活用例(クリックで拡大) 出所:ソニーセミコンダクタソリューションズ
- 新BEVブランド「AFEELA」を初披露、ソニー
ソニーとホンダが共同出資するソニー・ホンダモビリティは2023年1月4日(米国時間)、米国ラスベガスにて2023年1月5日から開催される「CES 2023」への出展に先立ち記者説明会を開催し、二次電池式電気自動車(BEV)ブランド「AFEELA」を発表し、そのプロトタイプを披露した。
- ソニー、AITRIOSを活用した有償サービスを開始
ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)は、エッジAIセンシングプラットフォーム「AITRIOS」を活用して、パートナー企業のシステム開発と運用を支援する有償サービス「Console Developer Edition」の提供を始めた。
- 2nm世代の国産化へ、国内8社出資の製造会社Rapidus始動
経済産業省は2022年11月11日、2nmプロセス以下の次世代半導体の製造基盤確立に向けた研究開発プロジェクトの採択先を、ソニーグループやキオクシアなど国内8社の出資で設立した半導体製造企業Rapidus(ラピダス)に決定したと発表した。
- ソニー、視力検査並みの手軽さで嗅覚測定できる装置
ソニーは2022年10月5日、さまざまなにおいのもと(嗅素)を制御し、においを提示することのできる装置「NOS-DX1000」を2023年春に発売すると発表した。嗅素を制御する独自技術「Tensor Valve(テンソルバルブ)テクノロジー」をベースに実現した。アルツハイマー病など疾患の早期発見などに有効とされる嗅覚測定を手軽に実施できる装置としての普及を目指していく。
- ソニー、セキュリティカメラ用CMOSセンサーを発表
ソニーセミコンダクタソリューションズは、撮影した画像の「全画素出力」と「特定領域の高速出力」を同時に行える有効約512万画素の1/3型(対角6.53mm)CMOSイメージセンサー「IMX675」を開発、2022年8月からサンプル品の出荷を始めた。
- 2種類の画像を異なるフレームレートで同時出力するCIS
ソニーセミコンダクタソリューションズは2022年7月20日、セキュリティカメラ用の1/3型有効約512万画素のCMOSイメージセンサー(CIS)「IMX675」を発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.