新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、東京大学生産技術研究所を中心とする研究グループと共同で、パワー半導体のエネルギー損失を約半分に低減させることができる「自動波形変化ゲート駆動ICチップ」を開発した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2023年3月、東京大学生産技術研究所を中心とする研究グループと共同で、パワー半導体のエネルギー損失を約半分に低減させることができる「自動波形変化ゲート駆動ICチップ」を開発したと発表した。
開発したICチップは、出力電流を切り替える「ゲート駆動回路」、電流切り替えのタイミングを決める「センサー回路」および、電流波形を変化させる「制御回路」という3つの回路を集積した。これによって、パワー半導体のゲート端子を駆動する電流波形を、適切なタイミングとなるよう自動で制御し、エネルギー損失を抑えることに成功した。
ICのチップサイズは2.5×2.0mmである。同等機能を備えた従来の装置は外形寸法が14×7cmと大型で、応用機器への搭載は極めて難しかったという。今回は回路サイズを従来の2万分の1程度に小型化したことで、実用化に大きく近づいた。
開発したICチップとパワー半導体を組み合わせた実証実験では、600V/80Aの条件下でパワー半導体のエネルギー損失は約9mJとなった。従来の汎用的な駆動用ICを用いた場合は約17.5mJである。この結果から、パワー半導体のエネルギー損失を約49%も低減できることを確認したという。
NEDOと東京大学の研究グループは今後、「より高耐圧のパワー半導体のエネルギー損失を低減する自動最適化手法」や、「センシング誤差を改善したセンサー回路の開発」および、これらを集積したゲート駆動ICチップの開発に取り組む計画である。なお、今回開発したICチップは、シリコン製品だけでなく、SiC(炭化ケイ素)など、さまざまなパワー半導体のゲート駆動に用いることができるという。
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