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LoRaWANが、スマートシティー市場のニーズを満たすCAGR25%の成長市場

拡大が見込まれるスマートシティー市場だが、“都市”はあらゆる技術にとって、非常に複雑な導入環境だ。LoRaWANは、都市が持つ独自のさまざまな課題を解決する選択肢となるだろう。

» 2023年04月12日 09時30分 公開
[Donna MooreEE Times]

 複数の市場予測によると、スマートシティーは2023〜2030年の間に、CAGR(年平均成長率)25%で成長する見込みだという。“都市”は、IoT(モノのインターネット)ソリューションプロバイダーにとって、非常に魅力的な市場になるだろう。しかし、こうした市場への参入を目指すベンダー各社にとって、都市には独自のさまざまな課題が存在している。

 都市はあらゆる技術にとって、非常に複雑な導入環境だ。それはIoTネットワーキングにとっても例外ではない。都市のニーズを満たすように設計されたネットワーキング技術を選択することが重要なのだが、その理由を理解するための課題について考察していきたい。

スマートシティーイメージ図[クリックで拡大] 出所:Shutterstock スマートシティーイメージ図[クリックで拡大] 出所:Shutterstock

物理的課題への対応と拡張性

 まず、都市にネットワークを展開するには、大きな物理的課題がある。都市は主に、鉄鋼やコンクリートで造られているため、無線信号がこのような材料を透過することが難しい場合が多く、コネクティビティの問題が生じる。さらに、多くのIoTセンサーが地下や地中に設置されているという点も、信頼性の高い接続を確保する上での課題となっている。そこで重要なのが、LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)のような、都市環境での成功実績を持つネットワーク技術を選択することだ。

 LoRaWANは、コンクリートや金属の他、地下でも信号を通過伝送することが実証されている。最近では、電池駆動のリレーが加わったことで、導入が簡単で低消費電力かつ標準規格ベースの手法を提供できるようになり、ゲートウェイを追加する場合と比べてわずかなコストで、LoRaWANのカバレッジを現在の物理的限界を超えて拡張可能になった。

 2つ目の課題は、大多数のIoTアプリケーションはわずかな量のデータを伝送するため、高帯域幅技術と比べてわずかなコストでコネクティビティや拡張要件に対応することが可能な、低帯域幅ネットワークが望ましいという点だ。

 LoRaWANを採用すれば、1つのゲートウェイで数千個のセンサーをサポートでき、コストもわずか数百米ドルしかかからないため、新しいアプリケーションをネットワークに追加する場合に、非常に高いコスト効率でシステムを拡張できる。都市では、今後さらに開発や成長が進んでも、既存ネットワークが引き続き最適な選択肢であり続けることが望まれるため、こうした拡張性は非常に重要なメリットだといえる。

消費電力と柔軟性

本稿の筆者で、LoRa AllianceのCEO(最高経営責任者)兼会長のDonna Moore氏 出所:LoRa Alliance 本稿の筆者で、LoRa AllianceのCEO(最高経営責任者)兼会長のDonna Moore氏 出所:LoRa Alliance

 3つ目は、デバイスの消費電力を考慮することが非常に重要だという点だ。ネットワークを決定する際に検討すべきコスト関連の重要な要素となるのが、メンテナンスと継続稼働である。低消費電力のエンドデバイスを使用すれば、電池寿命が10年以上に延び、時間とコストの削減と同時に環境保護が実現できる。

 ここで留意すべき重要な点は、数百万個ものデバイスが、手の届きにくい場所や地下に埋もれた状態の場所で動作することになるため、電池寿命が長ければ、時間や人件費を大幅に削減できるということだ。このためLoRaWANは、デバイスの製品寿命全体にわたってコストを大幅に削減し、さらに環境やエネルギーの持続可能性を高められる。

 4つ目は、都市のニーズは時間とともに進化するため、柔軟なビジネスモデルを持つことがネットワークソリューションの将来性を高めるという点だ。LoRaWANは、LPWANの中で最もネットワークの柔軟性が高く、独自の要件を持つあらゆる分野のニーズを満たすことが可能なため、この問題に対処できる。プライベートネットワークの構築、公共ネットワークや衛星ネットワークへの接続、コミュニティーネットワークへの参加、ハイブリッドの活用などが可能となる。

規則、規制、要件の存在

 5つ目は、都市は公的機関なため、考慮すべき多くの規則、規制、要件が存在するという点だ。オープンスタンダードは、長期的なソリューションに投資する場合、唯一の有効な選択肢となる。独自規格のソリューションは、都市を単一ベンダーに拘束するため、利用可能な製品の量や種類が制限され、また、価格も固定される恐れがある。これは、都市の長期的なニーズを全て満たすことができない危険性があるという重大な問題だ。

 都市は、規制当局によって認証されたエンドデバイスを使用するよう要求すべきだ。認証は、デバイスが信頼でき、規格に準拠していることを確信する唯一の方法であり、潜在的なサポートコストを削減し、相互運用性を確保する。LoRaWANは、国際電気通信連合(ITU)によって正式に規格として承認され、この要件を満たしている。また、この技術はLoRaアライアンス認証プログラムによってサポートされている。

 スマート化を目指す都市は、将来のニーズを予測し、現在の課題を考慮する必要がある。LoRaWANのようなオープンスタンダードは、信頼性、柔軟性、多様な選択肢を提供するエコシステムをもたらすことから、最適といえる。これらの特徴によって、都市は、課題解決のために革新と協力を惜しまない強力なパートナーを見つけられるだろう。オープンスタンダードの使用と、認証されたエンドデバイスの導入を組み合わせれば、都市のIoTコネクティビティの選択は、今後何年にもわたって投資対効果を提供することになるだろう。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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