物質・材料研究機構(NIMS)は、素子界面を精密に制御することで、室温トンネル磁気抵抗(TMR)比が世界最高になる631%に達したと発表した。今回の成果は、磁気センサーの高感度化や磁気抵抗メモリ(MRAM)の大容量化につながるとみられている。
物質・材料研究機構(NIMS)は2023年4月、素子界面を精密に制御することで、室温トンネル磁気抵抗(TMR)比が世界最高となる631%に達したと発表した。今回の成果は、磁気センサーの高感度化や磁気抵抗メモリ(MRAM)の大容量化につながるとみられている。
TMR比は、素子における抵抗変化の大きさを示し、この値が大きいほどセンサーの感度やメモリの集積度を高めることができる。ところが、2008年に公表された604%を最後に、室温TMR比の値は更新されていないという。
NIMSの研究グループは今回、磁性層と絶縁層の界面を精密に制御することで、従来の課題を解決した。まず、全ての層を単結晶で作製し、磁性層と絶縁層との界面に極めて薄い金属マグネシウムを導入した。具体的に磁性層はコバルト鉄合金を用い、スパッタリング法で作製した。一方、絶縁層は酸化マグネシウムを用い、電子線蒸着法で作製した。材料に応じた手法を用いることで、絶縁層内原子による磁性層の汚染を抑えることに成功した。
続いて、絶縁層を工夫した。下界面には厚みが0.6nmという極薄の金属マグネシウムを挿入した。上界面には上部磁性層を積層する直前に、微量の酸素ガスを吹き付けた。こうした制御によって、上下界面における酸素の量が適切に調整され、急峻(きゅうしゅん)な界面を実現することができたという。
今回開発した素子では、絶縁層の膜厚によってTMR比が振動して変化する、「TMR振動」が現れることも確認した。今回得られた室温のTMR振動幅は141%で、従来よりも極めて大きいという。
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