Hosseini氏は、「TSMCの3nm導入および製造拡大に遅延が生じていたのは、ASMLのEUV(極端紫外線)リソグラフィによるマルチパターニングを導入する必要があったからだ」と指摘する。
「EUVマルチパターニングはコストが高いため、EUVは費用対効果の面で魅力を失っていたが、EUVマルチパターニングのレイヤー数を最小限に抑えられるよう設計ルールを緩和した結果、ダイサイズが大幅に拡大した。真の3nmノードが拡大していくのは、スループット向上を実現したASMLのEUVシステム『NXE:3800E』が2023年後半に利用できるようになってからになるだろう」(Hosseini氏)
Hosseini氏によると、NXE:3800Eは、EUVマルチパターニングの全体コストを削減することにより、ウエハーのスループットを既存の「NXE:3600D」と比べて約30%向上させることが可能だという。
同氏はレポートの中で、「TSMCは、より多くの顧客向けに、N3Eをはじめとする3nmノードの派生プロセスの生産を拡大すべく、2024年前半にNXE:3800Eの導入を加速する予定だ」と述べている。
TSMCは、顧客であるNVIDIAからリソグラフィ関連のサポートを受けている。
C.C. Wei氏は、「(計算リソグラフィを高速化するNVIDIAのソフトウェアライブラリ)『cuLitho』ソフトウェア/ハードウェアによって、コストの高い処理をNVIDIA GPUに移行させることで、TSMCがILT(Inverse Lithography Technology)や深層学習を展開できるようサポートを提供する」と述べる。
Bank of Americaのリサーチアナリストを務めるBrad Lin氏は、「TSMCは最近、2nmプロセス以降の製造においてNVIDIAとSynopsys、ASMLとの協業を発表している。TSMCは現在、そのグループの中で唯一のファウンドリーだ」と述べている。
TSMCは、次世代のノードである「N2」の生産を2025年にも開始する予定だ。
C.C. Wei氏は、「N2には、顧客から高い関心が寄せられていて、顧客の関与も多い」と語る。「当社の2nm技術は、トランジスタ密度とエネルギー効率の両面で業界最先端のプロセスノードとなり、将来にわたり、当社の技術リーダーシップが拡大されることになるだろう」(同氏)
現在のチップ在庫調整は、TSMCが3カ月前に予測した水準よりも高く、ことし(2023年)の第3四半期にまで及ぶ可能性があるという。その結果、TSMCは、2023年の売上高がほぼ10年ぶりに減少する可能性があると予測した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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