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計算リソグラフィを40倍高速化するAIライブラリマスク作成時間は2週間から8時間に(1/2 ページ)

NVIDIAは、計算リソグラフィ(Computational Lithography)の高速化に向けたAIライブラリを発表した。1枚のフォトマスクの作成時間が、2週間から8時間に、大幅に短縮されるとする。TSMCは2023年6月から導入するという。

» 2023年04月04日 13時30分 公開
[Sally Ward-FoxtonEE Times]

NVIDIAがAIライブラリ「cuLitho」を発表

 NVIDIAは、計算リソグラフィ(Computational Lithography)の高速化に向けてソフトウェアライブラリを構築した。最新のGPUハードウェアと組み合わせることで、同ワークロードを桁違いに高速化できるという。このライブラリ「cuLitho」は、2023年6月からTSMCで使用される予定である。計算リソグラフィの高速化によって、歩留まりを向上し、それによりチップ当たりのコストを削減できる可能性がある。さらに、同ワークロードに関連する二酸化炭素排出量の削減や、ターンアラウンドの高速化、微細なフィーチャーサイズ(加工寸法)の高度なプロセスノードの実現といったメリットも期待できる。

 NVIDIAのアクセラレーテッドコンピューティング担当バイスプレジデントを務めるVivek Singh氏は、「cuLithoは、マスク製造だけでなく、それを使用するファウンドリーの開発サイクル全体を高速化する。cuLithoの2つ目の利点はさらに奥深いものである。現在の計算リソグラフィの演算は大規模であるが、実は将来的なチップ製造には十分ではない可能性がある。これからのチップには新しいテクノロジーが必要で、それには10倍以上の演算が必要になる可能性がある」と述べている。

 分野としての計算リソグラフィは、約30年前にフィーチャーサイズがパターニングに使用する光の波長以下に微細化されたときに始まった。回折パターンを補正するためにマスクを調整する必要があったが、それによって、形成されるフィーチャーサイズに影響が出るようになった。さらに微細化が進むと、マスク形状を計算するアルゴリズムがますます複雑になり、形状を直感的に予測することが難しくなった。現在、計算リソグラフィには年間数百億のCPU時間を消費していて、今日のチップ設計と製造における最大の計算負荷となっている。

フォトマスクパターンと、ウエハーに転写される回路パターン フォトマスクパターンと、ウエハーに転写される回路パターン[クリックで拡大] 出所:NVIDIA

 計算リソグラフィは現在、OPC(光近接効果補正)とILT(逆リソグラフィ技術)の2つの主要技術を使用している。ILTはOPCより高度であるが、計算コストが高額である。cuLithoは、ILT技術のより広範な使用をサポートし、それによって、より広いウエハーエリアに焦点が当たり、歩留まりが向上し、チップ当たりのコストを削減できる。Singh氏は、「微細化が進むにつれて、ILTは“あると便利なもの”から“なくてはならないもの”に変化している」と述べている。

 OPCとILTはどちらも、マスク製造企業またはファウンドリーでデータセンターレベルのコンピューティングを必要とする。Singh氏によると、これらのデータセンターは「ムーアの法則」よりも急速に成長しているという。

 Singh氏は、「この爆発的な問題を解決するには半導体工場内のコンピュータの数が足りなくなる日も近いかもしれない」と述べる。「現時点で半導体工場に3つのデータセンターがある場合、10年後には100のデータセンターが必要になる。電力についてはどうだろうか。45MWなら問題ないかもしれないが、45GWとなると何らかの変化が必要だ」(同氏)

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