Texas Instruments(TI)は、自動車の電動化が急速に進む中で、未来のクルマに求められる「航続可能な距離の最大化」や「充電時間の短縮」などにつながる半導体デバイスの開発と安定供給に力を入れる。
Texas Instruments(TI)の日本法人である日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2023年5月23日、電気自動車(EV)向けを中心とした車載半導体の事業戦略に関する記者説明会を都内で開催した。自動車の電動化が急速に進む中で、未来のクルマに求められる「航続可能な距離の最大化」や「充電時間の短縮」などにつながる半導体デバイスの開発と安定供給に力を入れる。
TIは車載半導体事業を強化している。全社売上高に占める車載半導体事業の割合について、TIのシニアバイスプレジデントでマーケティング担当のKeith Ogboenyiya氏は、「数年前は20〜21%であった。これが2022年度には25%に達した」と話すなど、その構成比は急速に高まる。その背景には、新たに設計されたEVの登場が挙げられる。電動化に伴い、「自動車のアーキテクチャも大きく進化している」という。
こうした中でTIが注目するのは、「EV用パワートレインシステム」である。「バッテリー管理システム(BMS)」や「トラクションインバーター」および、「車載充電器(OBC)とDC-DCコンバーター」などで構成される。
これらの領域に対し、1回の充電で長い距離を走行できたり、満充電までの時間を短縮したり、システムを小型化したりできる半導体ソリューションを、フルシステムで提供できるのが同社の強みだという。開発中のEV車両でサポートが予定されているバッテリーパックの800V化にも対応していく。
続いて、日本TIの社長を務めるSamuel Vicari氏が、日本の顧客に対する設計支援や半導体デバイスの供給体制などについて述べた。例えば、「Tier1との直接取り引きによって顧客のニーズをより早く、より的確にとらえることが可能となった。この結果、顧客に対する支援もより早く、より良いサービスを提供できる。自動車メーカーとの調整も行っている」と話す。
設計支援の一つが、動作検証を済ませたレファレンスデザインの提供である。2023年5月に発表したEVのトラクションインバーターに向けた絶縁型ゲートドライバーIC「UCC5880-Q1」を搭載したレファレンスデザインも既に用意した。UCC5880-Q1を始め、バイアス供給パワーモジュールや複数のリアルタイム制御マイコン、高精度センサーなどを実装しており、800V/300kWのSiC EVトラクションインバーターシステムの開発、検証を迅速に行うことができる。
半導体デバイスの安定供給に向けた設備投資も、10〜15年後を見据えて積極的に展開する。例えば、米国テキサス州リチャードソンや、同シャーマン、ユタ州リーハイに建設する300mmウエハー対応の新工場では、アナログ製品や組み込み製品の製造に適した45〜130nmプロセステクノロジーノードを採用する。日本市場に対してもコミットし、50年前から生産を行ってきた。「日本の製造拠点を拡大できるかどうかは、常に検討している」と述べた。
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