Tirias ResearchのMcGregor氏は、「今回の協業によって最も恩恵を受ける企業はQualcommだが、Appleも恩恵を受ける可能性がある。Intelとモデムのパートナーシップを結んでいるMediaTekの他、Googleにもメリットがある可能性がある。さらに、独自チップの製造を検討している他の携帯端末メーカーにもメリットがあるかもしれない」と述べている。
実際に、自動車からデータセンターまで、モバイル以外のさまざまなアプリケーションには、Intel 18Aノードに最適化された標準的なArmコアの恩恵を受けられるものが多いことを、Cutress氏とKanter氏は指摘している。
Cutress氏は、「実際、モバイルSoCのようなASICも多数存在する。車載インフォテインメントシリコンの要件は、それほど厳しくない」と述べる。
Kanter氏は、「Arm IPは車載インフォテインメントに役立つ可能性がある。General MotorsがAndroidを採用したことから分かるように、AndroidはArmコア上で最適に動作する」と説明した。
McGregor氏は、「モバイル市場は、ほんの一例にすぎない。コンシューマーエレクトロニクスおよび組み込み市場では、さらに多くのArmコンポーネントが使用されている」と述べる。同氏は、「実際に、IFSとArmの協業は、より要件の厳しいデータセンターアプリケーションにすぐに拡張されるだろう」と付け加えた。
「両社は非常に迅速に拡張を進めることが可能だ。Intelが長年にわたってArmのライセンシーであることを思い出してほしい。Intelはアーキテクチャに精通している。唯一、制約があるとすれば、それは需要面ではないか」(McGregor氏)
ファウンドリーに関しては、DTCO手法は以前から存在していたため、IFSが最初というわけではない。実際、Intel独自のCPUコアのほとんどは特定の生産ノード向けに設計されていて、IDM(垂直統合型デバイスメーカー)ではあるが、周波数と電力に関してはDTCOの優位性を示す好例となっている。
Intel 18Aプロセスは、同社が「RibbonFET」と呼ぶGAA(Gate-All-Around)トランジスタと「PowerVia」としてブランド化されたバックサイド電源供給配線網(BSPDN)を採用した、Intel 20Aに続く2番目のノードだ。Intelの20Aと18Aの2つの製造技術は、Intel自身とIFSの顧客のために開発された。どちらもDTCOに豊富な選択肢を提供するものだ。
GAA FETは、チャネルをゲートで取り囲む囲むため、プレーナー型トランジスタやFinFETと比較して、リーク電流を最小限レベルに抑えられるなど、いくつかの重要な利点がある。
また、GAAトランジスタでは、特定の製造プロセス向けだけでなく、特定の半導体チップ設計の範囲内でもナノシートの幅を変えることが可能だ。このため、性能(幅を広げる)やエネルギー消費量(幅を狭める)、ダイ面積などを細かく調整できるようになる。
モバイルSoC設計において、GAAトランジスタのリーク電流が低減されることは、明らかな利点といえる。さらに、モバイルSoC設計向けにトランジスタアーキテクチャを調整することで、電力や性能の面でさらなるメリットを得られるようになる。一方、スタンダードセルの調整や、モバイル専用ライブラリの開発、Intelの18AへのArm IP実装などにより、トランジスタレベルで性能や電力、面積、コストをさらに最適化することが可能だ。残念ながら、IFSとArmは、トランジスタ設計の最適化に関連する詳細についてはまだ正式に発表していない。
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