この他にもIFSとArmは、発表文の中で、アプリケーションやソフトウェア、パッケージ、シリコンに至るまで、ターゲットとするプラットフォームを最適化する考えであるとし、本質的なSTCOを示唆した。Intelは、ここに「EMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)」(2.5次元)と「Foveros」(3次元)の両方のパッケージング技術が含まれる可能性については認めたが、まだ詳細情報を共有することはできないとしている。
Intelは、「今回の協業では、2.5次元と3次元の両方のパッケージング技術の適用を考慮している」と述べている。
これまで高レベルで統合されたSoCに注力してきたモバイル業界に、ディスアグリゲーション(分離)された設計を持ち込むことは、業界にとって重要な節目となる。IntelとArmが何を実行しようとしているのかはまだ正確には分からないが、発表の枠組みとしては今のところ、Intel 18Aプロセスに限定されているのに対し、分離された設計では、コスト最適化のために複数ノードを使用するということになる。また、アナリストは、先進パッケージングは現在、非常にコストが高い点を指摘している。
Cutress氏は、「Qualcommはここ2年の間、IEEEカンファレンスにおいてチップレットやパッケージングに関するトピックを発表している。スマホ向けでなければ、ノートPC向けのSoCで実現するかもしれない。ここで主な論点となっているのがコストで、チップレットパッケージングはまだ非常に高額だ」と述べている。
Kanter氏は、「モバイル分野の高性能パッケージングは、コストに依存している。現在のところ、大半の高性能パッケージング技術は、実装コストが比較的高い。3D積層によるコスト差を見てみると、メリットが大きくなるか、またはより成熟したフローでコストを削減できれば、より高度なモバイルパッケージングを実現可能だということが分かる」と述べる。
McGregor氏は、「分離されたモバイルSoC設計は、近い将来には実現しないだろう。モバイルに関しては、サイズや消費電力、コストに制約があることを忘れてはならない。つまり、シングルダイにまだメリットがあるのだ。少なくとも、高性能パッケージングのコストが下がるか、複数ダイを使用することの経済性が変化してからの実現になるだろう」と述べる。
実際にArmも、「モバイルSoCにおける分離は可能だが、かなり注意深く検討しなければならない」としている。
同社の広報担当者は、「さまざまな要因が作用しており、モバイルのコスト構造を評価する必要がある。そして重要なのが、分離とパッケージ技術を確実に活用できるよう、RTLを最適化する必要があるという点だ」と述べる。
Kanter氏は、「しかしSTCOは、パッケージングだけにとどまらず、熱管理から生産フローに至るまでの全てに関与することになるだろう」と述べる。
「STCOには、単なるパッケージング以上のものが含まれる。その一部は、熱管理や電源供給、パッケージングなどを製造フロー全体に統合することだ」(Kanter氏)
IntelがIFSに期待している、競合メーカーに対する優位性の一つに、「Intel 18A対応の生産能力を米国と欧州の両拠点に確保することで、IFSの顧客企業がサプライチェーンを多様化できるようになる」という点がある。
今回の協業はArmのモバイルIPに限定されているため、大手モバイルSoCメーカーが米国(Apple、Qualcomm)や台湾(MediaTek)、中国(UNISOC)に拠点を置いているのに対し、実際のデバイスは今後も中国やインド、東南アジア諸国で組み立てられるであろうことを考慮すると、米国や欧州でSoCを生産することが重要なのかどうかはまだ分からない。
しかし、現在の地政学的な緊張を考えると、サプライチェーンの多様化はそれだけでアドバンテージになり得る。従って、Intel 18Aノードの最先端チップを米国と欧州の両方で(最終的に)作ることは、IFSが持つ紛れもない切り札になると、Kanter氏とMcGregor氏は述べていた。
McGregor氏は、「米国と欧州の両方で生産できることは、特に軍事/政府用途では有利になるだろう」と語った。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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