筑波大学らの研究チームは、電子スピン共鳴(ESR)法を用い、発光電気化学セル(LEC)の動作機構を解明したと発表した。低コストで環境負荷が小さいLECの実用化に弾みをつける。
筑波大学数理物質系/エネルギー物質科学研究センターの丸本一弘教授らによる研究チームは2023年6月、電子スピン共鳴(ESR)法を用い、発光電気化学セル(LEC)の動作機構を解明したと発表した。低コストで環境負荷が小さいLECの実用化に弾みをつける。
LECは、電気化学発光を応用した有機発光素子。有機発光材料とイオン液体の陽イオン(P66614+)および陰イオン(TFSI-)からなる「発光層」や、「陽極」「陰極」で構成される。有機ELに比べ、構造が簡単で柔軟性に優れているという。印刷技術を用いることにより製造コストを削減でき、低電圧駆動によって電力消費を抑えることも可能である。半面、「応答速度が遅い」「駆動寿命が短い」といった課題もあった。
そこで研究チームは、課題解決に向けてLECの詳細な動作機構を解明することにした。具体的には、発光材料としてスーパーイエローを用いたLECについて、電子スピン共鳴(ESR)法を用い、LECが動作している状態で電荷のスピン状態を観察した。
これにより、LECに印加する電圧(Vbias)が高くなると、発光とESRがいずれも増えることが分かった。得られた信号を理論解析したところ、ESR増加の起源は、スーパーイエローに注入された「正孔」と「電子」であることを明らにした。しかも、電荷ドーピングの進行が輝度の上昇と相関関係にあり、これはドーピングされた電荷が発光層上に分布していることを示すものだという。
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