東京大学と奈良先端科学技術大学院大学の共同研究グループは、低温で形成できるナノシート酸化物半導体をチャネル材料に用いて、高性能かつ高信頼のトランジスタを開発した。
東京大学生産技術研究所の小林正治准教授と、奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学領域の浦岡行治教授らによる共同研究グループは2023年6月、低温で形成できるナノシート酸化物半導体をチャネル材料に用いて、高性能かつ高信頼のトランジスタを開発したと発表した。
先端半導体は、さらなる高集積化や高機能化が求められている。こうした中で、三次元構造など半導体の高集積化を進めていくうえで期待されているのが「酸化物半導体」である。酸化物半導体は、既にフラットパネルディスプレイで用いられてきた。この材料を半導体集積回路へ応用するには、均一なナノ薄膜の製膜技術が重要になるという。
研究グループは今回、原子層堆積法を用い酸化物半導体のナノ薄膜を形成する技術を開発した。具体的には、In2O3とGa2O3を原子層ごと、交互に成膜をしてInGaO(IGO)のナノ薄膜を形成した。このナノシートIGOをチャネル材料とするプレーナ型トランジスタを試作した。
この試作品を用いて、移動度としきい値シフトにおけるトレードオフの関係性について解明した。その上で、トレードオフの課題を解決するため、新たにIGOナノシートをゲートで覆った「Gate-All-Around構造」を開発した。新たな構造を採用したことで、「ノーマリーオフ動作」や「プレーナ型に対して駆動電流が2.6倍向上」「移動度は1.2倍向上」「しきい値電圧シフトの大幅な低減」を実現したという。
東京大、酸化物素子で磁気抵抗比を10倍以上に
RaaS、先端半導体設計プラットフォームを開発へ
多数のベンゼン環からなる「ポリアセン」を合成
グラファイト基板上に半導体ナノ量子細線を作製
反強磁性体で「トポロジカルホール効果」を実証
東京大ら、フィルム状有機半導体センサーを開発Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング