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日本の前工程装置のシェア低下が止まらない 〜一筋の光明はCanonの戦略湯之上隆のナノフォーカス(63)(3/4 ページ)

» 2023年06月23日 11時30分 公開

日本の前工程装置のシェア低下が止まらない

 図5に、前工程装置の地域別シェアを示す。2022年は、米国が49.0%、日本が24.0%、欧州が21.3%、韓国が2.1%、中国が0.4%だった。

図5 前工程装置の地域別シェア(〜2022年)[クリックで拡大] 出所:三菱UFJモルガンスタンレー証券、野村証券のデータ、筆者の調査を基に作成

 米国が2020年以降、シェアを増大させている。その一方、2010年頃まで35〜40%付近で米国とトップシェア争いをしていた日本は、その後急激にシェアを低下させ、2018年に持ち直したかに見えたが、2019年以降もジリ貧状態である。2022年は、2021年からも2ポイント下がってしまった。

 なぜ、日本の前工程装置のシェアが下がるのか?

 この原因を突き止めるために、各種前工程装置について、2011年と2020〜2022年のシェアをグラフにしてみた(図6)。この図から、唯一マスク検査装置だけが大幅にシェアを増出させているが、ほぼ全ての前工程装置が、2011年から2020〜2022年にかけてシェアを落としていることが分かる。

図6 日本の前工程装置のシェア(2011年、2021〜2022年)[クリックで拡大] 出所:三菱UFJモルガンスタンレー証券、野村証券のデータ、筆者の調査を基に作成

 特に、シェアの低下が大きいのは、露光装置、ドライエッチング装置、CVD装置、スパッタ装置、バッチ式洗浄装置、CD-SEMである。惨憺たるありさまとしか言いようがない。各装置において、シェアの低下を止めないと、手遅れになるのではないかと危機感を覚えるほどだ。

 では、日本の前工程装置産業に何か希望の光はないのだろうか? ここで、2021年に5.4%だった日本の露光装置のシェアが、2022年に8.2%に上昇していることに気付いた。ここに一筋の光明があるかもしれない。

どん底に落ちたかに見えた露光装置だが……

 1990年代に、NikonとCanonが露光装置の出荷額のシェア合計で約80%のシェアを独占していた時代があった。しかし、2000年頃から台頭してきたASMLに駆逐され、日本のシェアは10%以下に落ち込んだ注1)

 ところが、露光装置の出荷台数の企業別シェアをグラフにしてみると、日本企業が健闘していることが分かった(図7)。3社ある露光装置メーカーのうち、出荷額シェアで90%以上を独占しているASMLは、出荷台数シェアでは60%前後である。

図7 露光装置の出荷台数の企業別シェア(〜2022年)[クリックで拡大] 出所:三菱UFJモルガンスタンレー証券のデータを基に筆者作成

 一方、2011年に23.7%の出荷台数シェアがあったNikonは、2022年に6.8%に落込んだ。ところが、もう1社の日本企業のCanonは、順調に出荷台数シェアを増大させ、2022年には31.5%を占めるに至った。これはおおむね、ASMLの半分に相当する。つまり、露光装置の出荷台数では、Canonが善戦していると言える。

 では、Canonは、どの露光装置で勝負しているのだろうか?

注1)NikonとCanonがASMLに敗北した原因については、以下の文献を参照ください。湯之上隆『いつまでも「職人芸」では海外メーカーに勝てない 日本の半導体製造装置はなぜスループット、稼働率が劣るのか』(JBPRESS、2010年9月24日)

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