九州工業大学を中心とした研究グループは、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)薄膜と窒化アルミニウム(AlN)薄膜の接合界面における電気的スピン変換技術を用い、磁化の制御が可能なことを明らかにした。
九州工業大学や山口大学、米国のPurdue University、シンガポールのNanyang Technological Universityおよび、インドのIndian Institute of Technology Kanpurらによる研究グループは2023年7月、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)薄膜と窒化アルミニウム(AlN)薄膜の接合界面における電気的スピン変換技術を用い、磁化の制御が可能なことを明らかにした。
SrTiO3は、異種材料との接合界面で原子配列が乱れ、界面と平行方向に金属的な振る舞い(電子伝導)を示す。特にSrTiO3/AlN界面では、SrTiO3/Al2O3界面と比べ、より大きな電子伝導になるという。これら電子は界面電場と垂直方向に運動しており、ラシュバ・エデルシュタイン効果によって「スピン流」の生成が期待できる。
研究グループは今回、スピントルク強磁性共鳴という手法を用い、スピン流から磁性体(NiFe)の磁化に作用する「スピン軌道トルク」の大きさを測定した。この結果、SrTiO3/AlNは、NiFeの強磁性共鳴線幅が明確に変化した。その変化量は白金(Pt)と比べても十分に大きいことが分かった。
研究グループは研究成果について、スピン軌道トルクを利用した次世代磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)や、スピン発振子を利用した人工知能デバイスの開発などへの応用が期待できるとみている。
ソニー、TSMC、東エレクが語る半導体サプライチェーン/人材戦略
両面ゲートIGBT、スイッチング損失を6割低減
東北大学、巨大な磁気抵抗を示す磁性材料を発見
反強磁性体で「トポロジカルホール効果」を実証
素子界面を精密に制御、室温TMR比が世界最高に
「FeSi」、室温下でスピントロニクス機能を実現Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング