今回は、第2章第5節の第3項(2.5.3)「電動化技術」から、「機電一体化」の概要を取り上げる。機電一体化とは何か、メリットとデメリットは何かを説明する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介してきた。
本シリーズの第30回から、第2章第5節(2.5)「モビリティー」の概要をご説明している。第2章第5節(2.5)「モビリティー」は、第1項(2.5.1)「はじめに」、第2項(2.5.2)「自動運転と遠隔操作」、第3項(2.5.3)「電動化技術」、第4項(2.5.4)「EMC・ノイズ対策」、第5項(2.5.5)「日本のモビリティー産業界への提言」で構成される。前々回からは、第3項(2.5.3)「電動化技術」の内容をご紹介している。
前々回は主に、電動車(電動自動車)の種類(2.5.3.1の(1)に相当する部分)を簡単に述べた。続く前回は、世界における自動車の環境規制動向(2.5.3.1の(4)に相当する部分)を説明した。今回は、「機電一体化」(2.5.3.2に相当する部分)の概要を解説する。
「機電一体化」(あるいは「機電一体」)とは、従来は別々に組み付けていた機械系部品・ユニットと電子系部品・ユニットをあらかじめ一体化し、1つの構造体(モジュール)として開発することを指す。機械系部品・ユニットには、モーターや制御バルブ、ギアボックス、コイルなど、電子系部品・ユニットには、電子制御ユニット(ECU)、インバーター、イグナイター、DC-DCコンバーターなどがある。
「機電一体化」モジュールでは、「制御性の向上」「小型化」「組み立て工数の低減」といったメリットを期待できる。
「制御性の向上」では、従来は各部品(ユニット)のばらつきをそれぞれ調整し、さらに車両に取り付けてからもばらつきを調整していた。機電一体化モジュールは複数の部品(ユニット)を接続した状態で調整するので、ばらつきを低減しやすい。このため、制御性が向上する。
「小型化」では、一般的には機械系ユニットの外形寸法が大きく、電子系ユニットの外形寸法が小さいことから、機械系ユニットの内部に電子系ユニットを配置しやすい。これらをモジュール化することで、全体の外形寸法を小さくするとともに、筐体を共用することなどで重量の低減を図れる。
「組み立て工数の削減」では、車両の組み立て工程で、機械系ユニットと電子系ユニットを接続する部品(ワイヤーハーネス)の取り付け工程を省略できる。部品コストと工数が減り、全体としてのコスト低減につながる。
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