東北大学の研究チームは、微小なグラファイト電極を用い、二層グラフェン量子ドットにおける高周波反射測定を実現した。グラフェン量子ドット電荷計を垂直配置することで、高速/高精度な量子ビット読み出しが可能になるという。
東北大学大学院工学研究科の上面友也大学院生(同大学電気通信研究所所属)、同大学材料科学高等研究所の篠崎基矢特任助教、大塚朋廣准教授(同大学電気通信研究所兼任)らによる研究チームは2023年7月、微小なグラファイト電極を用い、二層グラフェン量子ドットにおける高周波反射測定を実現したと発表した。グラフェン量子ドット電荷計を垂直配置することで、高速/高精度な量子ビット読み出しが可能になるという。
グラフェンは、量子コンピュータの基本素子となる「量子ビット」の材料として注目されている。量子ビット状態を読み出す手法の一つとして、量子ビット近傍に配置した量子ドット電荷計が用いられる。ただ、電荷計の高周波反射測定による量子ビット読み出しを実現するためには、「寄生容量の低減」や「量子化伝導度付近におけるインピーダンス整合」といった条件を満たすデバイスや測定回路を作成する必要があるという。
研究チームは今回、絶縁シリコン基板上にグラファイトを配置し、その上に絶縁層、二層グラフェン、絶縁層、電極を配置した積層構造のグラフェンデバイスを作製した。このデバイスを共振回路に組み込み、高周波信号の反射特性を測定した。この結果、加えたゲート電圧によりグラフェン伝導度が変化し、反射特性も変わることを観測した。
量子化伝導度付近ではインピーダンス整合が満たされていることを確認した。この付近は伝導度が変化すると、反射率も大きく変化するため、高い感度で読み出しが可能となる。クーロンダイヤモンドと呼ばれる特徴的な電気伝導も観測した。このことは今回の測定手法が、量子ドットの伝導測定においても有用であることを示すものだという。
測定した伝導・ノイズ特性を用い、電荷計としての読み出し精度を評価した。電荷計を量子ドットの「真上(あるいは真下)」に配置することで、読み出し速度と精度を大幅に改善できることが分かった。
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