日本は、現時点では既存の法令/ガイドラインを活用した緩やかな規制を採用している。また、内閣府は「生成AIに関するリスクや懸念への適切に対処するための『ガードレール』の設置が必要」とし、協議を進めている。上杉氏は、日本の規制について「日米欧中の中で最も緩い」とした上で、「日本企業は、日本の法令/ガイドラインを軸にソリューションを開発してしまうと、海外への事業展開が難しくなったり、罰則の対象になったりする可能性が大きい」と述べた。
日本企業がAI活用に向けて取るべき戦略については、「AI/生成AIなどの技術は、急速に進化している。企業は、AI活用に関する細かなガバナンスを設定することにこだわるのではなく、大枠を作って運用し、細かな部分は適宜修正すべきだ」と説明した上で、各国/地域の規制への対応について「日本企業は、海外の規制動向を注視し、特に欧州規制を基準にすべき(GDPRと同対応のイメージ)だ」(同氏)と語った。
PwCコンサルティング 上席執行役員 パートナー Analytics & Insightsの藤川琢哉氏は、AI/生成AIの活用について、「日本は、同じくガイドラインを軸に緩やかな規制を採用している米国に対して、大きく後れを取っている」とし、4つの理由を挙げた。
1つ目は、COVID-19の規制緩和の時期だ。米国は経済回復を優先して行動規制の解除を早めに行ったのに対し、日本は慎重姿勢で緩やかな規制緩和を行ったことで、AI活用に関する対応が遅れた。2つ目が、生成AI活用に対するリスクの認識の差だ米国では44%の企業が楽観的に捉えているのに対し、日本で楽観的な認識をしている企業はわずか9%で、多くの企業が生成AIの活用に不安を感じていると説明した。
3つ目として、日本は、MLOps(機械学習の運用)の整備が遅れているため、使用しているAIモデルと実際のビジネス環境に齟齬が生じていて、利用者側がAI活用の有効性を実感できていないことを挙げた。4つ目として、AI活用の有効性への不信感から、AI関連投資や人材教育が進んでいないことを挙げた。
一方、藤川氏は「日本の強みは、現場の技術力や知識にあり、今まで活用しきれていなかった質の高いデータが蓄積されている。生成AIは、非構造系のデータに強いため、有効活用できれば、日本のDX推進の起爆剤になりえる」と語った。
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