THCS253/THCS254では、内蔵レジスタの設定を書き換えるだけで信号伝送路を変更できる。「今まで圧力センサー用に使っていた端子を温度センサー用に切り替える」などの変更を、回路設計を変更することなく、内蔵レジスタの設定変更のみで容易に行えるようになる。そのため、システムを拡張しやすくなる。
ザインエレクトロニクスは、「これまでは、将来の拡張性を見込んで、念のためにFPGAを実装しておくことが多かった。だが当然ながらFPGAは回路設計が必要になる。THCS253/THCS254は、そうした回路設計にかかる工数も減らすことができる」と説明する。
さらに、THCS253/THCS254の端子のうち、GPIOとして用意された端子は、レジスタで1端子ごとに入出力信号を設定できる。このため、より柔軟なシステム拡張/変更が可能だ。なおGPIOの端子数は、THCS253は32端子、THCS254は20端子である。「最初に設計したプラットフォームをベースに拡張できるので、設計工数を削減できる」(ザインエレクトロニクス)
THCS253/THCS254では最大2系統のI2Cを使える。これにより、本体基板側と個別機能基板側で、異なる制御信号を使えるようになる。「複数系統の制御信号に対するニーズは、特に物流倉庫の無人ロボット、製造工場のAGV(無人搬送車)、工作機械、自動販売機などで高い」(ザインエレクトロニクス)
さらに今回の新製品は、基板間で異なるクロック信号が使える「非同期モード」を備えている。通常、システムは同一クロックで動作する。だが、DXを進める上で多数のセンサーを用いるようになると、「センサー用のクロックとSoC(System on Chip)用のクロックを使い分けたい、独立した複数のクロックで動作させたい、というニーズが増えてきた」と同社は説明する。THCS253/THCS254では、内蔵クロックまたは外付けクロックを用いて、非同期モードでシステム全体を動作できるようになる。
THCS253/THCS254は、スタンバイモードの消費電流が6mAと低いが、スタンバイモード中でもI2Cの伝送および最大8ビットの信号伝送が可能だ。「スリープ時でもこのタスクは実行しておきたいというニーズに応える機能だ」(同社)
ザインエレクトロニクスは「日本の工場のDXは、既存の装置や生産ラインにセンサーをどんどん後付けしていく形が多いため、信号配線ばかりが増えてしまうという課題がある。今回の新製品は、基板間接続をシンプルにすることで、DXの負担や苦労を解消しようというコンセプトで開発した。産業機器市場では、初めてのコンセプトになるのではないか」と語った。
ザインエレクトロニクスは、ミックスドシグナルLSIとAIoT(人工知能+モノのインターネット)ソリューションを手掛けるファブレス半導体メーカーだ。本社およびR&Dの拠点は日本で、米国や中国、韓国、台湾にも支社を構えている。2022年12月期通期の売上高は54億5600万円で、このうちミックスドシグナルLSI事業の売上高は73%を占める。
同社は高速情報伝送技術に強みを持ち、独自の高速インタフェース技術である「V-by-One(ブイバイワン) HS」は、4K/8K TVの情報伝送技術として事実上の世界標準となっている。
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