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対中規制の強化には「新たな同盟が必要」 米元当局者現行の規制はいずれ破綻する?(2/2 ページ)

» 2023年08月15日 11時30分 公開
[Alan PattersonEE Times]
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米大手半導体メーカーからは規制反対の声も強まる

 規制がさらに強化される可能性に対し、反対の声が上がっている。

 米国の大手半導体メーカーは、米国政府高官を訪問し、新たな規制を阻止しようとしている。Bloombergが2023年7月22日に報じたところによると、QualcommとNVIDIA、IntelのCEO(最高経営責任者)たちは最近、米国家安全保障担当補佐官であるJake Sullivan氏をはじめ、ホワイトハウス当局者たちと協議したところだという。

 香港に拠点を置くSouth China Morning Post(SCMP)紙によると、中国の2023年前半の半導体チップ輸入額は、前年同期比22%減となる1626億米ドルに落ち込んでいるという。中国は、世界最大の半導体市場を有している。

 米財務長官Janet Yellen氏は、中国訪問を終えた後、2023年7月9日に行われたCBSニュースの報道番組「Face the Nation」のインタビューで、「米国は、新たな規制を施行する準備ができている」と述べている。

 同氏は、「今回の中国訪問の目的は、『国家安全保障は妥協できるものではない』ということを説明するためだった。たとえ偏狭な経済的利益が損なわれようと、妥協はできないということだ」と述べる。

 中国は最近、半導体業界に対し、半導体や光ファイバー、太陽電池などの主要材料であるガリウム/ゲルマニウムの輸出ライセンスを義務付ける、独自規制を発表している。中国は、これらの材料の世界最大の供給国だ。

 中国は、さらなる輸出規制措置を講じる可能性について警告している。前商務副大臣のWei Jianguo氏は、国営のChina Dailyで、「中国が最近発表した輸出規制は、ほんの始まりにすぎない」と述べ、さらなる技術規制を課さないよう米国政府に警告している(参考)。

日米オランダによる規制は「いずれ効力を失う」

 Wolf氏によると、米国と日本、オランダによる規制措置は、いずれ効力を失うことになるという。

 同氏は「オランダと米国、日本以外の国で、代替品の開発が始まるだろう。規制は常に進化させる必要がある。検査/計測分野の場合、例えば韓国やイスラエルには、代替製品を製造可能な非常に優れた企業が数多く存在している」と述べる。

 さらに、「日本とオランダの輸出業者は、米国が2022年10月に規制措置を発表した後も、引き続き中国に装置を輸出している」と付け加えた。

 「規制の効力が大きく制限されている。この他にも大きな抑制となっているのが、米国の規制は、米国人エンジニアによる装置関連のサポートも禁止しているという点だ。日本やオランダなどの他の国々のエンジニアが、中国の工場で装置関連のサポートを提供することは禁止されていない。これらを考慮すると、規制は完全に効力を失っていると言える」(Wolf氏)

 Wolf氏とTobin氏は、新たにCOCOMのような同盟を結ぶことを提唱しているが、「こうしたパートナーシップの提携が実現するのは、まだ何年も先のことになるだろう」と述べている。

 Wolf氏は、「多くの国が中国からの報復を懸念している」と語った。同氏は最近、同盟強化を訴えるべく韓国を訪問したという。「同盟国のほとんどは、中国に関する国家安全保障問題について米国がどのような立場にあるのか、まだ納得していない」(同氏)

 Tobin氏は、量子コンピューティングやAI(人工知能)などの特定のテクノロジー分野を中心とした、より小規模で機敏なフレームワークで構成される、新しい多国間パートナーシップを提唱している。「特定のハイエンド半導体技術を管理するという米国、日本、オランダの合意は、新体制への第一歩だ」と同氏は述べた。

 ハイテク業界は非常に複雑になっている。Wolf氏は、「米国政府には、より多くの、より優れた資格を持つ規制当局者が必要だ」と述べる。政府のさまざまな輸出管理機関には「AI、量子コンピュータ、半導体製造の一流の専門家がいない」と同氏は述べた。ことし(2023年)5月の議会での証言で、同氏は「これら全ての分野で専門家の数を増やすべく、全ての輸出管理機関の予算を倍増すべきだ」と主張した。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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