東京大学は、フェロアキシャル物質を用い、磁気キラル二色性を電場で誘起し、制御できることを実証した。この現象を利用すると、電場でも磁場でも光の吸収を制御することが可能になるという。
東京大学大学院新領域創成科学研究科の林田健志氏らによる研究グループは2023年8月、フェロアキシャル物質を用い、磁気キラル二色性を電場で誘起し、制御できることを実証したと発表した。この現象を利用すると、電場でも磁場でも光の吸収を制御することが可能になるという。
フェロアキシャル秩序を有するフェロアキシャル物質は、左右2つの回転状態を識別し制御することで、メモリや光学素子などへの応用が期待されている物質である。研究グループはこれまで、代表的なフェロアキシャル物質であるニッケルとチタンを含む酸化物「NiTiO3」において、旋光性が電場によって誘起されることを明らかにしてきた。
今回はNiTiO3を用い、電場を印加することで誘起される「磁気キラル二色性(電場誘起磁気キラル二色性)」について実証することにした。実験では、NiTiO3の単結晶試料を合成し、磁場および電場を印加して透過率を測定した。そして、電場と磁場を印加して得られた吸収係数と、電場と磁場がない状態で得られた吸収係数の差を取ることにより、電場誘起磁気二色性を観測することにした。
この結果、Nid-d遷移に相当する短波長赤外線領域のエネルギー(0.79〜0.84eV)において、電場誘起磁気キラル二色性を観測できた。電場誘起磁気二色性のスペクトルが光の進行方向を反転させると反転。印加する磁場の符号を反転させてもスペクトルは同じように反転したという。しかも、電場誘起磁気二色性の大きさは、加える磁場および電場に比例することが分かった。
研究グループによれば、「電場によって誘起される磁気キラル二色性は極めて大きく、類似の元素および構造を持つキラル物質Ni3TeO6の磁気キラル二色性に匹敵する」という。
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