東京大学と東ソーの研究グループは、しなやかで割れにくく、金属並みの高い靭性を実現した「高強度ジルコニアセラミックス」を開発した。
東京大学と東ソーの研究グループは2023年6月、しなやかで割れにくく、金属並みの高い靭性を実現した「高強度ジルコニアセラミックス」を開発したと発表した。
高強度ジルコニアは、歯科材料や光ファイバー用接着部品、産業機器材料などに用いられている。ただ、「強度」と「靭性」は両立できない関係性にあり、これまでは強度を低下させずに靭性を高めることが難しかったという。
研究グループは今回、イットリア濃度が1.5モル%の正方晶ジルコニア(1.5Y)を作製した。具体的には、加水分解法でイットリアが均一に固溶をしたジルコニア粉末を合成。この焼結挙動を調べたところ、1300〜1400℃において微細な結晶粒からなる高密度の正方晶ジルコニアを作製できることが分かった。これにより、微細な組織を制御すれば、イットリア濃度が低い領域でも正方晶ジルコニアが得られることを実証した。
左は1000〜1500℃で焼結させた1.5Yおよび、1.5YA(0.3モル%アルミナドープ品)の相対密度と結晶粒径の変化。右は1300〜1500℃で焼結させた1.5YのXRDプロファイル[クリックで拡大] 出所:東京大学続いて、微細組織の効果を確認するため、1400℃で焼結をさせた1.5Yの力学特性を調べた。この結果、靭性は22.0MPa・m1/2、曲げ強度は1210MPaであった。イットリア濃度が3モル%である従来の高強度ジルコニア(3Y)と比べ、靭性は4倍近く向上することが分かった。
微量アルミナドープの効果についても確認した。1.5Yにアルミナを1モル%ドープ(1.5Y1A)、1350℃で熱間等方圧加圧(HIP)処理した。そうしたところ、靭性を低下させることなく、曲げ強度は1500MPaに改善できたという。
なお、高強度ジルコニアは長時間、高温大気など厳しい環境にさらされると、自発的に正方晶が単斜晶へ相変態し、力学特性が低下するといわれている。そこで開発品の劣化加速試験(熱水140℃−30時間処理)を行った。この結果、0.3モル%アルミナドープ(1.5YA)は、単斜晶の進展が大幅に抑制されていることが判明。開発したジルコニアは、靭性だけでなく劣化耐性にも優れていることを実証した。
今回の研究成果は、東京大学大学院工学系研究科附属総合研究機構次世代ジルコニア創出社会連携講座の松井光二特任上席研究員、馮斌(フウビン)特任准教授、吉田英弘特任教授および幾原雄一特任教授のグループと東ソーの細井浩平主任研究員らによるものである。
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