東京大学の研究グループは、会話や音楽、環境騒音などを利用して発電できる「音力発電素子」を開発した。総厚みは50μmと極めて薄く、電力密度も世界最高レベルを実現した。
東京大学大学院工学系研究科のOsman Goni Nayeem特任研究員(研究当時)、李成薫講師、横田知之准教授、染谷隆夫教授らによる研究グループは2023年9月、会話や音楽、環境騒音などを利用して発電できる「音力発電素子」を開発したと発表した。総厚みは50μmと極めて薄く、電力密度も世界最高レベルを実現した。
開発した音力発電素子は、電界紡糸法を用いて作製した複数のナノファイバーシートを積層している。具体的には、圧電材料であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)ナノファイバーシートを、2層のナノファイバー電極シートで挟んだ構造である。
ナノファイバーシートは、ファイバー径が数百ナノメートルという多数のファイバーによって形成されている。シート上に多数の微細な穴があるため全ての層に通気性があり、音による空気の振動はPVDFナノファイバーシートに直接伝わる。しかも、PVDFナノファイバーシートを形成するファイバーの配光を一方向とした。これにより115dBの音源に対し、電力密度は8.2W/m2という、世界最高レベルを達成したという。
研究グループは、開発したナノメッシュ音力発電素子をマスクに貼りつけ、実証実験を行った。この結果、会話の音や周辺からの音楽を電力に変換し、マスク上のLEDを発光させることに成功した。また、温湿度センサーで計測した温度と湿度のデータを無線転送するセンサーシステムの電力源として利用できることも確認した。
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