東北大学と大阪大学の研究グループは、300GHz帯のテラヘルツ電磁波に作用する「ひずみフォトニック結晶」を作製し、電磁波の伝搬方向を曲げることに成功した。テラヘルツ電磁波を用いる6G(第6世代移動通信)において、電磁波を制御するための基盤技術となる可能性が高いとみている。
東北大学大学院工学研究科の北村恭子教授と大阪大学大学院基礎工学研究科の冨士田誠之准教授らの研究グループは2023年9月、300GHz帯のテラヘルツ電磁波に作用する「ひずみフォトニック結晶」を作製し、電磁波の伝搬方向を曲げることに成功したと発表した。テラヘルツ電磁波を用いる6G(第6世代移動通信)において、電磁波を制御するための基盤技術となる可能性が高いとみている。
フォトニック結晶は、誘電率が異なる2種類以上の材料で構成され、その周期は電磁波の波長程度である。その周期的な格子点配列が、電磁波に対するフォトニックバンド構造を形成するため、伝搬方向を制御できる。ただ、低周波数側はフォトニック結晶としての特徴が得られなかったという。
研究グループは今回、フォトニック結晶の格子点について、その位置を緩やかに変化させると電磁波に対する時空間のひずみが発現し、疑似的な重力効果として電磁波の伝搬方向を曲げられる可能性があることに着目した。そこで新たに考案したのが「ひずみフォトニック結晶」である。低周波数領域において、フォトニック結晶の格子点を一軸に沿って、正方格子から長方格子状へとわずかに変化させた。
実験では、誘電率が高く損失は小さい誘電体であるシリコンを用い、300GHz帯のテラヘルツ電磁波に対して動作する「ひずみフォトニック結晶」を作製した。このひずみフォトニック結晶にテラヘルツ電磁波を入力したところ、伝搬方向の曲げに相当する出力結果が得られた。電磁界シミュレーションともよく一致したという。
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