最初に、NVIDIAの会計年度(Fiscal Year、FY)が、TSMCやIntelが採用しているCalendar Year(CY)とは異なることを説明する(図2)。例えば、NVIDIAのFY2024年Q1は、実際は2023年2〜4月であり、FY2024年Q2は2023年5〜7月である。このように、NVIDIAの会計年度FYがCYとは異なるために、半導体メーカー売上高ランキングを発表したSemiconductor Intelligenceは、NVIDIAの売上高を「予測値」としたのだろう。
では次に、NVIDIAの会計年度FYがCYとは異なることを頭に入れて、NVIDIAの事業分野別の四半期売上高を見てみよう(図3)。
もともとNVIDIAのGPUは画像処理用に開発された半導体である。そのため、FY2022年頃までは、画像処理が必須となるGaming向けが稼ぎ頭だった。ところが、FY2023年以降、Data Center向けがGaming用を追い越し、さらにFY2024年Q1(42.8億米ドル)からQ2(103.2億米ドル)にかけて飛躍的な成長を遂げた。
このData Center向けのGPUが、ChatGPTなどの生成AIに使われるAI半導体である。そして現在、生成AI開発に引っ張りだこになっているのが、NVIDIAの「A100」と「H100」である。
「A100」と「H100」はどちらもチップサイズが露光限界に近い800mm2を超えるモンスターチップである。また、価格は「A100」が1万米ドル、「H100」が4万米ドルもする。
これらがどのくらい規格外のチップかというと、例えばことし発売された「iPhone 15」シリーズ用の「A17 Bionic」プロセッサは、チップサイズが約100mm2で価格が約100米ドル、Samsungなどのメモリメーカーが製造している先端のDDR5_16Gbit DRAMがチップサイズ61.2mm2で1個(たったの)3〜4米ドルである。この比較から、「A100」と「H100」が、いかに桁外れなのかが分かるだろう(図4)。
話が逸れたので、元に戻す。FY2024年Q1からQ2にかけてData Center用が急成長し、その結果、全体の売上高も急拡大したNVIDIAの本当の世界ランキングは、何位になるのだろうか?
四半期の売上高について、CYで決算を行っているTSMC、Intel、Samsungと、FYを採用しているNVIDIAを直接比較することはできない。
そこで、TSMCなどCYの場合は四半期決算の最終月の3月、6月、9月、12月にそれぞれの売上高をプロットし、NVIDIAの場合はFYの最終月の4月、7月、10月、1月で売上高をプロットしたグラフを作成してみた(図5)。
2017年3月まではIntelが1位だったが、メモリバブルで急成長したSamsungが2017年6月から2018年9月まで1位に躍り出た。しかしその後、メモリ不況が訪れると、2018年12月以降は再びIntelが1位に返り咲いた。
その後しばらく、1位Intel、2位Samsungの状況が続いたが、コロナ特需が起きたことから2021年9月にまたもやSamsungが1位になり、首位の座を2022年6月まで維持した。しかしコロナ特需が2022年に崩壊し始めると、Intelは2021年12月以降、Samsungは2022年6月以降、急速に売上高が減少。それに対し、2019年以降に右肩上がりに成長してきたTSMCが2社を抜き去り、2022年9月に1位に躍進した。そのTSMCも、2022年12月以降は売上高が急減している。
そのような中で、NVIDIAが2023年4月から同年7月にかけて売上高を飛躍的に増大させた。決算の時期が1カ月異なるので直接比較はできないが、図5を見る限りでは、2023年6〜7月頃に、1位がTSMC、2位がNVIDIA、3位がIntel、4位がSamsungになっていると思われる。
さらに、TSMCが2023年9月以降も売上高が下がるようなら、同年10月に160億米ドルの売上高を見込むNVIDIAが1位に躍進する、ということもあり得ない話ではない。となると、1993年に設立されたNVIDIAが史上初めて、半導体売上高ランキングで首位に立つことになる。
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