フォトニック結晶レーザーを用い、宇宙通信を実現 : 1億分の1に減衰しても信号を復元
KDDIとKDDI総合研究所、京都大学の研究グループは、フォトニック結晶レーザー(PCSEL)を用い、低軌道衛星と静止軌道衛星間に相当する距離で通信可能なことを実証した。
KDDIとKDDI総合研究所、京都大学大学院工学研究科の野田進教授、森田遼平同特定研究員、井上卓也同助教らによる研究グループは2023年10月、フォトニック結晶レーザー(PCSEL)を用い、低軌道衛星と静止軌道衛星間に相当する距離で通信可能なことを実証した。
KDDIとKDDI総合研究所、京都大学の3者はこれまで、PCSELを用いた自由空間光通信の研究を行ってきた。衛星間通信での活用に向けて、3万6000kmを超える長距離をカバーするための通信技術が必要となるからだ。PCSELは光ファイバー増幅器などを用いなくても、従来と同等の送信パワーが得られるため、通信システムの小型化や電力消費の低減が可能となる。
今回は、PCSELの周波数変調とコヒーレント受信方式を組み合わせた。これにより、出力光の強度が1億分の1に減衰しても通信が可能なことを実証した。具体的には、送信側のPCSELを「周波数変調器」として動作させた。一方、受信側ではPCSELの狭線幅性を生かし、コヒーレント受信方式を取り入れ、極めて弱い光信号も受信可能な自由空間光通信方式を考案した。
実験では、0.5GbaudのNRZ電気信号でPCSELを直接駆動し、高い出力の光周波数変調信号を生成した。この光信号を1億分の1に減衰させて、コヒーレント受信後に復調した。この結果、元のNRZ信号に復元できることを確認した。
低軌道衛星−静止軌道衛星間における光通信のイメージ[クリックで拡大] 出所:KDDI他
光ファイバー通信の基礎知識
今回から、「IEDM 2017」で開催されたチュートリアルから、シリコンフォトニクス技術を紹介する。まずは、光ファイバー通信の基礎から始めていこう。
PCSELの高輝度化に成功、大型レーザー並みに
京都大学の研究グループは、フォトニック結晶レーザー(PCSEL)について、連続動作状態での輝度を1GWcm-2sr-1 まで高めることに成功した。この輝度は、CO2レーザーや固体レーザー、ファイバーレーザーなど大型レーザーに匹敵する値だという。
青色で高出力、高ビーム品質レーザー発振に成功
京都大学とスタンレー電気の研究グループは、高い出力とビーム品質動作を両立させた、「青色GaN系フォトニック結晶レーザー」を開発した。車載用部品の加工や高輝度照明、水中(海中)LiDARなどの用途に向ける。
京都大学ら、大幅に小型化したLiDARを開発
京都大学の研究グループは、フォトニック結晶レーザー(PCSEL)を搭載した小型の光測距システム(LiDAR)を、北陽電機と共同で開発した。光源部と受光部を一体化することで、体積を従来比3分の1とした。
FPGAの普及推進団体「ACRi」にインテルが参加
FPGA/再構成可能デバイスの活用方法を模索、研究する団体であるアダプティブコンピューティング研究推進体「ACRi(Adaptive Computing Research Initiative/アクリ)」は2022年5月10日、Intelの日本法人インテルが協賛企業として参加したと発表した。
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