Infineon Technologiesが、GaN(窒化ガリウム)パワーデバイスを手掛けるカナダのGaN Systemsの買収を完了した。今回の買収完了によって、Infineonは、350以上のGaNパワーデバイス関連IPおよび、450人以上のR&D部隊を有することになった。
Infineon Technologies(以下、Infineon)は2023年10月24日(ドイツ時間)、GaN(窒化ガリウム)パワーデバイスを手掛けるカナダのGaN Systemsの買収を完了したと発表した。InfineonのCEO(最高経営責任者)、Jochen Hanebeck氏は、「GaN Systems買収は、当社のGaNロードマップを大幅に加速し、関連する全てのパワー半導体技術に精通することで、われわれのパワーシステムにおけるリーダーシップをさらに強化するものだ」と述べている。
GaN Systemsは、カナダのオタワに本社を置く2008年設立のGaNパワーデバイス専門メーカー。民生機器向けの他、車載やデータセンター向けなどの幅広い市場に向けてGaNパワートランジスタを展開する、GaNパワーデバイス市場の主要プレーヤーの1社だ。車載分野では、具体的にはトヨタ自動車やBMW、Vitesco Technologiesとオンボードチャージャー(OBC)やトラクションインバーター、DC-DCコンバーターの開発で提携しているほか、中国USIとGaNパワーモジュールを共同開発している。
一方のInfineonは、2015年のInternational Rectifier買収によってGaNパワーデバイスに関する製品/技術を獲得。同年にはパナソニックとGaNパワー半導体開発で協業すると発表し、共同開発品であるノーマリーオフのGaN-on-Siトランジスタ構造を採用した「CoolGaN」を展開しているが、市場シェアは、一桁台で推移していた。Infineonは2023年3月、GaN Systemsの買収を発表。フランスの市場調査会社Yole Groupによれば、Infineon、GaN Systems両社のGaNパワーデバイス市場シェア(2022年)を合計すると16%となるという。
InfineonはGaN Systems買収の発表に際し、同社の有する完全内蔵型パワーダイパッケージ技術を中心としたパッケージに特化したIP(Intellectual Property)群や研究開発(R&D)部隊、顧客基盤、さらにファウンドリーの製造能力(GaN Systemsはファブレスメーカーで、TSMCをファウンドリーパートナーとしている)などの獲得によって「補完性の高い強みが結集され、『GaN市場における勝利の方程式』が生み出される」などとコメントしていた。
今回の買収完了によって、Infineonは、350以上のGaNパワーデバイス関連IPおよび、450人以上のR&D部隊を有することになった。同社は、「パワー半導体における当社の主導的地位を拡大し、市場投入までの時間を大幅に短縮できる」と述べている。
なお、Infineonはマレーシアのクリムにある拠点にGaNおよびSiC(炭化ケイ素)半導体のフロントエンド新工場を建設するなど、ワイドバンドギャップ半導体の製造能力の拡大も進めている。この新工場からは2024年後半に出荷を開始する予定で、同工場の稼働によってSiC、GaNベースの製品で新たに年間20億ユーロの売り上げ増となる見込みという。
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