ミネベアミツミは、これまで、IGBTについてはチップビジネスの展開にとどまり、モジュール化技術は有していなかった。また、後工程についても「日立パワーデバイスは、われわれより高いパッケージング技術を有している」(貝沼氏)といい、同社は「従来のチップ製造に加え、日立パワーデバイスのパッケージやモジュールの後工程技術および、生産能力を取得することで「パワー半導体を開発から一貫生産でき垂直統合型のビジネス展開が可能になる」としている。
また、従来トレンチゲートIGBTと比べ高い性能を実現できるという日立パワーデバイスの独自技術である「SG-IGBT」は、既にミネベアミツミの滋賀工場で試作中という。2024年度の市場投入を予定し、同社は「グローバルニッチトップを追求できる」と説明。さらに、SG-IGBTとミネベアミツミのチップ製造技術を組み合わせながら「シリコンパワーデバイスでSiCに近い性能を実現する」ことを目指すとしている。
統合後はパワー系の開発技術者が日立パワーデバイスから150人加わり、計400人体制になる。SiC技術者も新たに獲得することになり、ミネベアミツミは、「日立パワーデバイスのSiC技術者集団が持つ高耐圧SiC技術を生かしたSiCパワーデバイス事業の発展」などの統合効果も見込んでいる
貝沼氏は、パワー半導体市場について「パワー半導体分野は、本来、産業/電鉄系を中心に国内の重電機メーカーが、世界に対して非常に強い競争力を持っていた。しかし、EVが欧米で注目される中、現在、欧米メーカーに劣後しているのではないかと考えている」と言及。そのうえで、今後、EV市場の急成長と同時に充電インフラ整備や蓄電池の普及も進むことが予想されること、さらに再生可能エネルギー普及拡大も加え「産業分野において、巨大な電力市場が形成されることが期待されている」などと見解を述べた。
そして、買収後のパワー半導体事業の展開について「ニッチ分野を特定し、そこで高いマージンをとっていく」と説明。「一番強いのは輸送機器(電鉄)やパワーグリッドなどで、自動車がど真ん中ではない。われわれは、そんな大きな市場に大量の供給していくということは考えていない」などと語った。ただし、EV向けの展開についても「製品がホットで、ある程度の利益が出て、製品が差別化されている間はEV向けの中でもニッチな市場に提供していく」と方針を示した。
このほか、IGBTやSiCパワーデバイスを自社の電源製品などに利用することも想定。「われわれの独自技術が生かせられる性能を持っているものは、自分たちの最終製品に使っていきたい」と述べた。
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