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パワーデバイスの温度上昇が接合と放熱構造の変革を促す福田昭のデバイス通信(431) 2022年度版実装技術ロードマップ(55)(1/2 ページ)

今回は、「パワーデバイスにおける接合材料の現状と課題」の概要を紹介する。

» 2023年11月21日 10時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

パワーデバイスの接合における課題は「信頼性」と「放熱」

 電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。

 前々回から、第2章第6節第6項「2.6.6 接合材料」の説明を始めた。この項は以下の項目によって構成される。「2.6.6.1 接合材料の種類と特徴」「2.6.6.2 SMTにおける接合材料の現状と課題」「2.6.6.3 パワーデバイスにおける接合材料の現状と課題」「2.6.6.4 鉛フリー化」「2.6.6.5 先端半導体パッケージ分野における接合材料の現状と課題」「2.6.6.6 まとめと今後の動向」である。

 前回は、「2.6.6.2 SMTにおける接合材料の現状と課題」の概要を解説した。今回は、「2.6.6.3 パワーデバイスにおける接合材料の現状と課題」の概要をご紹介する。

第2章第6節第6項「接合材料」の主な目次。「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)から筆者がまとめたもの[クリックで拡大]

 「2.6.6.3 パワーデバイスにおける接合材料の現状と課題」は以下の2つの項目、(1)「高信頼性化」、(2)「高熱伝導化」(高放熱化)で構成される。(2)「高熱伝導化」はさらに、(a)「放熱面積の拡大」、(b)「接合材料の高熱伝導化」、(c)「接合プロセス」に分かれる。

パワー半導体の「ワイドギャップ化」で動作温度が上昇

 パワーデバイスの半導体材料は従来、シリコン(Si)が主流だった。最近ではワイドバンドギャップ(WBG:Wide Band Gap)半導体と呼ばれる、シリコンカーバイド(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などのエネルギーバンドギャップがSiよりも広い材料が、パワーデバイスに普及しつつある。

 WBG半導体デバイスはSi半導体デバイスに比べ、絶縁破壊電界強度(耐圧)が高い、オン抵抗が低い、動作温度を高くできる、といった優位性を備える。一方で動作温度の上昇は、現在使われているSAC系鉛フリーはんだの融点に近づくことを意味する。そこで耐熱性の高い接合材料へのニーズが高まっている。

パワーデバイスにおける接合材料の比較[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)

 具体的にはSiパワーデバイスの動作温度領域が150℃〜175℃であるのに対し、SiCおよびGaNのパワーデバイスは動作温度領域が175℃〜250℃と高くなる。半導体のダイと下地を接続するダイアタッチメント(ダイボンディングあるいはダイマウントとも呼ぶ)の材料が、特に高い耐熱性を求められる。

 WBGパワーデバイスのダイボンディングには、鉛(Pb)の比率を高めたSn-Pb合金の高温はんだが使われてきた。ただし有害な鉛(Pb)を多く含むため、環境負荷が問題となる。そこで、焼結型接合材料が高Pbはんだに代わる接合材料として期待されている。

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