今回は、第2章第6節第6項「2.6.6 接合材料」から、「SMT(Surface Mount Technology)における接合材料の現状と課題」の概要を紹介する。
電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。
前回から、第2章第6節第6項「2.6.6 接合材料」の説明を始めた。この項は以下の項目によって構成される。「2.6.6.1 接合材料の種類と特徴」「2.6.6.2 SMTにおける接合材料の現状と課題」「2.6.6.3 パワーデバイスにおける接合材料の現状と課題」「2.6.6.4 鉛フリー化」「2.6.6.5 先端半導体パッケージ分野における接合材料の現状と課題」「2.6.6.6 まとめと今後の動向」である。
前回は「2.6.6.1 接合材料の種類と特徴」から、接合材料の種類と特徴、用途などを簡単に解説した。今回は、「2.6.6.2 SMTにおける接合材料の現状と課題」の概要をご紹介する。
「2.6.6.2 SMTにおける接合材料の現状と課題」は以下の6つの項目、(1)「低コスト化」、(2)「ボイド低減」、(3)「微細化接続対応」、(4)「ディスペンス対応」、(5)「高信頼性化」、(6)「低温接合プロセス対応」で構成される。現在の表面実装技術(SMT:Surface Mount Technology)が抱える課題でもある。本稿では(6)「低温接合プロセス対応」のパートを説明したい。
表面実装では一般的に、「鉛フリーはんだ」が接合材料として使われている。鉛フリーはんだは有害物質である鉛(Pb)を含まないことから、エレクトロニクス機器の廃棄(埋め立て)に伴う鉛の流出が原理的には発生しない。しかし一方ではんだ付けの温度が上昇し、エネルギー消費が増大するとともに、薄型高密度実装基板への熱ストレスが強まるという問題が生じた。
代表的な鉛フリーはんだは錫(すず/Sn)を96.5%と銀(Ag)を3%、銅(Cu)を0.5%含む合金「SAC305はんだ」である(注:組成比は重量%)。この合金はんだをリフローはんだ付けするときのピーク温度は低くても240℃前後あり、従来の錫鉛(Sn-Pb)共晶はんだが210℃前後であったのに比べて少なくとも30℃前後上昇した。
そしてリフロー炉の消費電力は錫鉛共晶はんだに比べ、「SAC305はんだ」は20%程度上昇したとされる(出所:作山ほか、「環境負荷低減に向けた低温接合技術」、『FUJITSU』、vol.62、no.6、pp.715-722、2011年11月)。
そこでリフローはんだ付けのピーク温度をSn-Pb共晶はんだよりも低く抑えるとともに、鉛フリー化を実現した「低融点鉛フリーはんだ」の改良と普及が進んでいる。「低融点鉛フリーはんだ」の最有力候補は「錫ビスマス(Sn-Bi)系はんだ」である。組成比がSn42%、Bi58%の共晶点における融点は138℃と低い。Sn-Bi共晶はんだのリフローはんだ付けのピーク温度は170℃〜180℃と「SAC305」に比べて60℃以上も下がる。これはリフロー炉の消費電力に換算すると40%以上の削減に相当する(出所:作山ほか、同上)。
開発当初のSn-Bi系はんだ(共晶点付近の組成)は延性が低く、温度サイクル試験や落下衝撃試験などによる信頼性は十分とは言えなかった。しかし最近では微量元素の添加とBi組成の最適化などにより、これらの試験による結果はSAC系はんだに近くなってきた。なお微量元素の候補には銀(Ag)、アンチモン(Sb)、銅(Cu)、インジウム(In)、コバルト(Co)、鉄(Fe)などがある。
またリフローはんだ付けによってSn-Bi系はんだの表面に大量の酸化物(ドロス)が発生するという問題がある。最近でははんだ付け装置およびプロセス条件の改良により、ドロスの発生量をSAC系はんだ以下に抑えられるようになってきた。
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