NTTは2023年11月14〜17日、「NTT R&D FORUM 2023―IOWN ACCELERATION」を開催し、貼るだけで深部体温を計測できる生体リズムモニター技術や、非侵襲で血糖トレンドを計測するデバイスなど、同社の研究開発の最新成果を展示した。
NTTは2023年11月14〜17日、「NTT R&D FORUM 2023―IOWN ACCELERATION」を開催した。会場では、同社グループの研究開発の最新成果に関する展示や講演が行われた。
体表面に専用のデバイスを貼って深部体温の変化(生体リズム)を計測し、生活リズムとのズレを可視化する生体リズムモニター技術を展示した。同技術は、手のひらサイズのデバイスをおでこや鎖骨、脇などに装着している間、「体表面から簡単かつ低負担で、深部体温測定の標準である直腸温度センサーと同等の生体リズムを測定できる」(担当者)という。測定したデータは、スマートフォンやPCなどから確認できる。
人間は、地球の自転に合わせた約24時間の生理的なリズム(生活リズム)を持っているといわれている。また、生活リズムと生体リズムにズレが生じる「社会的時差ぼけ」により、心身の不調やパフォーマンスの低下が起こると指摘されている。
社会的時差ぼけは、太陽光をはじめ、光を浴びることで解消できるといわれている。生体リズムモニター技術で生活リズムとのズレを確認した場合は、意図的に光を浴びる時間を増やしたり、就寝時間や睡眠時間を調整したりなど、生活を改善する目安になる。
担当者は、生体リズムモニター技術について「デバイスやソフトウェアは、おおむね完成していて、実証実験を行っている。デバイスは、マカロンをイメージした親しみやすいデザインにした。用途は、熱中症の予防や睡眠の質の管理、うつ病などのメンタル不調の予兆検知などを想定している」とコメントした。
血糖値の相対変化(トレンド)を、電波を用いて非侵襲で24時間測定できるウェアラブルセンサーも展示した。
血糖値とは、血液中に含まれるグルコースの濃度のことで、糖尿病などのさまざまな疾患と関連がある生体情報だと考えられている。従来の血糖値検査は、針を体に刺して一定時間計測する方法や、針を刺して採取した血液から計測する方法が一般的だ。しかし、針を刺す方法は被検査者にとって、時間的にも身体的にも負担になるので、NTTは非侵襲的な血糖値の測定方法の研究を行っている。
同技術は、デバイスから電波を皮膚に照射し、その反射信号から、皮膚細胞内(1mm以下)のグルコース値のトレンドを計測/可視化するものだ。運動や食事による血糖値のトレンドを調べることで、個人に合った食事方法や運動習慣を提案することが可能になる。
担当者は、今後について「2023年末には、腕時計サイズまでデバイスを小型化できる見込みだ。しかし、研究開発中の方法では、皮膚とデバイスが接触する状況により取得できるデータも変化してしまう。そのため、実用化する場合、最初は貼り付け型のデバイスになるだろう。将来的には、(今回展示したような)非侵襲的方法で血糖値の絶対値を計測できるようにしたい」と語った。
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