筑波大学は、窒化アルミニウム(AlN)半導体を用い、ダイオードは827℃まで、トランジスタは727℃まで、それぞれ極めて高い温度環境で、安定に動作させることに成功した。地下資源掘削や宇宙探索、エンジン周辺など、高い温度環境でも半導体素子の利用が可能となる。
筑波大学は2023年6月、窒化アルミニウム(AlN)半導体を用い、ダイオードは827℃まで、トランジスタは727℃まで、それぞれ極めて高い温度環境で、安定に動作させることに成功したと発表した。地下資源掘削や宇宙探索、エンジン周辺など、高い温度環境でも半導体素子の利用が可能となる。
電子機器に搭載される一般的なICでは、Si(シリコン)半導体が用いられている。ところが、Si素子の動作可能な温度範囲は300℃以下であり、これを超える高温環境で用いるのは極めて難しかった。
そこで注目されてきたのが、絶縁体に近い材料で熱耐性にも優れたAlN半導体である。理論的にはSiC(炭化ケイ素)やダイヤモンドに比べ、高温で安定した動作が可能となる。ところが、500℃を超える動作環境で、AlN素子の電気特性を調べる装置がこれまではなかったという。
筑波大学数理物質系の奥村宏典助教らによる研究グループでも既に、AlNをチャネルとしたトランジスタと、窒素極性面AlNをベースに用いた分極効果トランジスタを開発してきたが、実際に動作検証を行ったのは500℃以下であった。
研究グループは今回、高真空下で測定できるプローバーを採用するなどして、電気特性を900℃まで測定できる評価装置を用意した。この装置を用い、試作したAlNベースのSBD(ショットキーバリアダイオード)とMESFET(電界効果トランジスタ)について、特性を評価した。
試作したAlN素子は、Siイオンを注入した厚み3μmのAlN層を電気伝導層として用いた。ショットキー電極にはNi/Auを、オーミック電極には窒素雰囲気下950℃で1分間加熱したTi/Al/Ni/Auを、それぞれ採用した。また、電極の外側はエッチングをすることで、素子の外側から回り込む電流を抑えた。
この結果、AlN SBDのオン/オフ比は、827℃でも104以上、AlN MESFETは同様に727℃でも約103を維持できたという。その理由として2点挙げた。1つは高品質のAlN層を用いたことで、漏れ電流を低く抑えられたこと。もう1つは、ショットキー電極として用いたNi(ニッケル)が、827℃でもAlN表面と反応することなく、熱的に安定していたことである。今後、オーミック電極を改善できれば、特性をさらに向上させることができるとみている。
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