柴田氏は今回の買収について「これからのルネサスを規定する重要なファーストステップになる」と語った。エレクトロニクス設計のデジタル化がますます進んでいることから、業界について川上の視点を取り入れたいと考え、設計プラットフォームの提供を構想したという。
この構想のパートナーにAltiumを選んだ理由は「協業する中で共通のビジョンを持つに至った」(柴田氏)ためだと説明し、同じく会見に登壇したAltium CEOのAram Mirkazemi氏は「Altiumにとって強力で魅力的なオファーを受けた。両社のビジョンも共通していて、一緒になればより効果が高いと判断した」とコメントした。
買収による両社のメリットとして、ルネサスはAltiumのプラットフォームのほかにクラウド/ソフトウェアに精通した人材を得られること、Altiumはルネサスの規模の大きさや顧客サポート力によって成長を加速できることなどを挙げた。柴田氏は「Altiumの成長のために、ルネサスの持つ力を最大限に活用する」と意気込んだ。
柴田氏は今後のルネサスの在り方について「プラットフォーム企業としてのルネサスと半導体ハードウェアメーカーとしてのルネサスで、2本柱を作っていく」と述べ、「デジタル化の流れは変えられないもので、トラディショナルなデバイスメーカーにとどまっていると隅に追いやられてしまう。今回の取り組みはルネサスにとって攻めでもあり、防御でもある」と総括した。
Altiumは1985年にオーストラリアで創業したソフトウェアメーカーで、現在は米カリフォルニア州を拠点にPCBの設計ソフトウェアやクラウドベースのプラットフォームを手掛けている。サブスクリプションでAltium製品を利用している顧客は世界で6万社を超え、主な顧客は中小企業だという。2023年の売上高は2億3600万米ドルと前年比19%増の高成長を遂げていて、EBITDAマージン(税引き前利益に支払利息と減価償却費を加えて算出される利益の、売上高に占める割合)は36.5%だった。
ルネサスは2023年6月に、社内で用いるプリント基板(PCB)設計ツールをAltium製の「Altium 365クラウドプラットフォーム」に統一すると発表していた。
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