ルネサスは2024年2月29日に、DRP-AI3とヘテロジニアスアーキテクチャを適用したビジョンAI向けMPU「RZ/Vシリーズ」の新製品として、「RZ/V2H」を発売した。RZ/Vシリーズでは最もハイエンドとなる製品で、既に量産も開始している。
RZ/V2Hは、アプリケーション処理を担うLinux用に最大動作周波数が1.8GHzのArm Cortex-A55を4コア、リアルタイム処理を担うRTOS用には同800MHzのCortex-R8を2コア、サブCPUとしてCortex-M33を1コア搭載。ロボティクス制御に必要なビジョンAIと高速リアルタイム制御を1チップで実現できるという。
RZ/V2Hは、DRP-AI3により電力効率を従来の10倍に高めた他、10TOPS/Wの処理性能を実現している。既存のRZ/Vシリーズの中で、最も高速にAI推論を実行できる。例えば、ResNet50による画像分類ではエントリーレベルのRZ/V2Lに比べて14倍、YOLOv2による物体認識では同9倍の推論性能を達成した(いずれも枝刈りを適用していないモデルを使用)。枝刈りを使うと、ResNet50では45倍もの性能を実現できるという。
さらに、DRPを適用し、画像処理ライブラリであるOpenCVの処理を高速化するOpenCVアクセラレーターを開発。これもRZ/V2Hに搭載した。これにより、OpenCVの処理はCPUに比べて16倍高速化できる。
ルネサスは、RZ/V2Hを搭載した評価ボードと、NVIDIAのGPUボード(「Jetson Orin Nano」)を用いて人物を認識するデモを行い、ボードの発熱を比較するデモを行った。

左=AI推論(人物認識)のデモ。左側がRZ/V2Hの評価ボードで、右側がGPUボード。推論性能は同等だった/右=ボードの発熱を比較している。GPUボードにはファンとヒートシンクが付いているにもかかわらず、チップのみのRZ/V2Hと同じくらいの温度ということが分かる。実際に触れてみても熱くなく、「温かい」と感じる温度だった[クリックで拡大]なお、RZ/V2Hの開発キットも既に提供中。さらに、Raspberri Pi(ラズパイ)のフォームファクターを踏襲し、RZ/V2Hを搭載したSBC(シングルボードコンピュータ)「Kaki Pi」(カキパイ)も発表した。AMR(自律走行搬送ロボット)やHSR(Human Support Robot)の開発向けのSBCで、ユリ電気商会から2024年4月後半にも販売を開始する予定になっている。
低消費電力で高速な推論を実現する組み込みAIチップ
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