台湾のファウンドリー各社は、海外展開に積極的に取り組んでいる。特に、既に海外拠点を有するTSMCとUMCは、海外拠点の拡張を加速させている。主に台湾を拠点とするPSMCとVISも、生産能力の地域的な柔軟性と競争力を高めるため、海外工場の設立を進めている。
TrendForceは、台湾ファウンドリーの海外生産能力が2024年から2027年にかけて大きく増加すると予測している。TSMCの生産能力の伸びは主に、米国のアリゾナ工場、日本の熊本工場と、ドイツの拠点によるものである。UMCは、中国需要と「脱中国」の両方に対応し、中国の厦門(アモイ)とシンガポールで生産能力を拡張する。PSMCは、宮城県の工場を通じて日本での存在感を高め、2027年までに同社の生産能力に占める日本の割合を7%に引き上げ、さらにインドにも施設を建設する計画だ。VISは、シンガポールの300mm新工場により、同社の生産能力のうちシンガポールの割合が14%から24%に増加すると見込んでいる。
地政学的な緊張により、欧州や米国、日本、韓国の顧客からの中長期的な脱中国/脱台湾傾向が高まっている。同時に、中国国内のサプライチェーンも競争力を増していて、世界のサプライチェーンが二分する傾向がますます明白になっている。台湾企業はこうした新しい状況において、海外工場の設立を通じて貿易と技術の障壁を乗り越えようとしている。
ただし、TSMCは米国アリゾナ工場では先進プロセスに注力しているが、日本の熊本工場とドイツのドレスデン工場では28nmおよび16nmの成熟プロセスの生産能力を拡張している。同様に、UMC、PSMC、VISの海外展開は28nmまでの成熟プロセスが中心である。TrendForceによると、成熟プロセスの生産能力の供給過剰に対する懸念が高まっていて、海外工場建設の追加コストと世界的なインフレによって事態はさらに悪化しているという。
VISとNXPの両社は、地理的な多様化が合弁事業において大きな役割を果たしていると説明している。
VISの会長であるLeuh Fang氏は、「VISは、世界有数の半導体企業であるNXPと協力して、当社初の300mmファブを建設できることを喜ばしく思っている。このプロジェクトは当社の長期的な開発戦略に沿ったものであり、顧客の需要に応え、製造能力を多様化するというVISのコミットメントを示すものだ」と述べている。
NXPの社長兼CEO(最高経営責任者)であるKurt Sievers氏は、「NXPは、競争力のあるコスト、供給管理体制、地理的レジリエンスのある製造基盤を確立するために、積極的な行動を続け、長期的な成長目標をサポートしていく」と述べている。
新工場の総工費は78億米ドルになる見込みだという。VISは合弁会社の株式の60%に相当する24億米ドルを、NXPは残りの40%に当たる16億米ドルをそれぞれ出資し、今後19億米ドルの追加投資を予定している。工場はVISが運営する予定で、1500人の雇用創出を見込む。
【翻訳:田中留美/滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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