NTTと岡山大学は、トポロジーの原理を利用した「ギガヘルツ(GHz)超音波回路」を開発した。スマートフォンなどの無線通信端末に用いる高周波フィルターの小型化や高性能化が可能になるという。
NTTと岡山大学は2024年7月、トポロジーの原理を利用した「ギガヘルツ(GHz)超音波回路」を開発したと発表した。スマートフォンなどの無線通信端末に用いる高周波フィルターの小型化や高性能化が可能になるという。
無線通信端末では、無数に飛び交う電波の中から、受信したい信号のみを抽出して取り込む必要がある。このために用いるのが高周波フィルターである。ハイエンドのスマートフォンでは100個近い高周波フィルターが搭載されているという。ただ、折れ曲がった導波路構造にすると、後方反射などを引き起こす。このため、従来技術では小型化が難しかった。
研究グループは今回、GHz超音波が後方反射するのを抑え、安定した伝搬が行える「トポロジカル超音波フィルター回路」を開発した。この回路を伝わる超音波は、周囲の周期孔の形状によってつくられるトポロジカル秩序で守られる。このため、導波路の形状に関係なく超音波は反射しないという。
超音波が伝わる導波路は、トポロジーが異なる左回りまたは右回りの領域に挟まれた接合部(エッジ)で形成されている。このエッジに外部から超音波を加えると、互いに反対方向に回転する「バレー擬スピン」が発生。途中に曲がり角があっても、エッジに沿って一方向に進む超音波伝搬が生じる。この現象は「バレー擬スピン依存伝導」と呼ばれ、本体形状が大きく変化しない限り、導波路エッジの伝搬が保護されるという。
研究グループでは、これらの特性を活用してリング・導波路結合構造を作製、GHz超音波フィルターの基本動作を実証した。作製したのは半径が10μm程度の微小な超音波リングである。従来技術を用いて開発した超音波フィルターの面積は数万μm2 と大きくなる。これに対し開発した技術を用いれば数百μm2で済み、これまでより100分の1以下のサイズで実現した。
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