Ambiqは従来比30倍の電力効率を達成したオンデバイスAI向けSoC「Apollo510」を展示した。
Apollo510は、同展示会において革新的な製品を対象としたアワード「embedded award」のハードウェア部門で受賞。同年第4四半期にも一般提供が開始される予定だ。今回、同社の創業者でCTO(最高技術責任者)を務めるScott Hanson氏に製品の特長などを聞いた。
Ambiqは2010年、「あらゆる場所でインテリジェントデバイスを可能にする」ことを目指し、Hanson氏が創設した米国テキサス州オースティンの半導体メーカーで、超低消費電力のMCU/SoCおよび、RTC(リアルタイムクロック)を開発。民生や医療向けウェアラブル、産業など幅広い分野に展開し、既に2億3000万デバイスの出荷実績があるという。Ambiqは自社製品について「世界で最も低消費電力の半導体ソリューション」をうたうが、こうした製品を可能としているのが、同社独自の特許技術である「SPOT(Subthreshold Power-Optimized Technology)」技術だ。
通常のCMOSプロセスは、トランジスタが論理的に0(Low)か1(High)かを判断するのに必要なしきい値電圧以上の内部コア電圧で動作させていて、ほとんどのコアは1.8Vまたは1.2Vを指定している。AmbiqのSPOTでは、この内部コア電圧を、はるかに低いサブスレッショルド電圧(しきい値電圧以下の電源電圧)にまで落とすもので、「消費電力は電圧の2乗に比例することから、大幅な消費電力削減を実現する」(Hanson氏)という。電圧をニアスレッショルドやサブスレッショルド領域まで下げると、温度や電圧などの変化に対して非常に敏感となるといった課題が多いが、そうした課題に対応する回路技術、回路アーキテクチャ、製造テスト技術などの『集合体』がSPOT技術だ。
また、同社はファブレス半導体メーカーで、TSMCを製造パートナーとしているといい、Hanson氏は「SPOTは非常に複雑なもので、これまで製造上の問題に何度もぶつかってきたが、TSMCだからこそ解決ができた。その結果、顧客には何の問題も生じていない」と述べていた。
同社は2015年に低消費電力のSoC「Apollo」シリーズ初の製品を発売、その後、2017年には第2世代、2018年には第3世代、2020年には第4世代のApollo SoCシリーズを続々と投入してきた。今回発表したApollo510は、第5世代「Apollo5」シリーズ初の製品で、前世代のApollo4と比較して電力効率が30倍、高速性能が10倍向上。複雑なグラフィックスや音声アプリケーション、常時接続の音声やセンサー処理と同時に、AIやML(機械学習)関連の処理を実行できるという。
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