ロームは、共鳴トンネルダイオード(RTD)を用いたテラヘルツ波発振デバイスと検出デバイスを開発、サンプル出荷を始めた。従来方式の発振装置に比べ体積は1000分の1以下に、価格も10分の1以下となる。
ロームは2024年9月30日、共鳴トンネルダイオード(RTD)を用いたテラヘルツ波発振デバイスと検出デバイスを開発、サンプル出荷を始めると発表した。従来方式の発振装置に比べ体積は1000分の1以下に、価格も10分の1以下となる。
電磁波「テラヘルツ波」は、電波のような透過性やレーザー光のような直進性など、さまざまな特長を持つ。このため、非破壊検査、医療・ヘルスケア分野におけるイメージングやセンシング、超高速通信技術への応用などが期待されている。ただ、「周波数逓倍方式」や「フォトミキシング方式」による従来の装置はサイズが大きく、導入コストは数千万円以上になることもあった。
そこでロームは、2000年代後半より東京工業大学や大阪大学といった多くの大学や研究機関と共同研究を行い、RTDを用いたテラヘルツ波発振/検出デバイスの開発に取り組んできた。政府研究開発プロジェクトなど複数のコンソーシアムにも参画している。
これらの成果を基に今回は、0.5×0.5mmサイズのテラヘルツ波発振用および検出用のRTD素子を開発した。この素子は周波数320GHz(代表値)、出力10〜20μWのテラヘルツ波を発振、検出できる。
発振デバイスと検出デバイスのアンテナ面を10mmの距離で対向させると、ダイナミックレンジで40dB(代表値)の検出性能が得られるという。駆動時の消費電力は両デバイスとも10mW(代表値)に抑えた。しかも、テラヘルツ波の発振と検出を室温で行える。このため、従来方式のように装置を冷却する必要もないという。
サンプル品は外形寸法が4.0×4.3mmのPLCCパッケージに実装して供給する。サンプル価格(税別)は10万円。従来方式の装置に比べ極めて小さく、低価格を実現した。
ロームは、RTDテラヘルツ波デバイス評価キットも用意している。Digilentが販売する「Analog Discovery 3」などの計測ツールとPC、ソフトウェアを組み合わせることで、テラヘルツ波の発振・検出デバイスを比較的容易に評価することができる。
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