Infineon Technologiesが、厚さ20μmと「世界最薄」(同社)の300mmパワー半導体ウエハーのハンドリングと加工に初めて成功したと発表した。厚さを従来より半分にすることで基板抵抗が50%下がり、電力システムにおける電力損失は15%以上削減できるという。
Infineon Technologies(以下、Infineon)は2024年10月29日(ドイツ時間)、厚さ20μmと「世界最薄」(同社)の300mmパワー半導体ウエハーのハンドリングと加工に初めて成功したと発表した。厚さを従来より半分にすることで基板抵抗が50%下がり、電力システムにおける電力損失は15%以上削減できるという。
InfineonのCEO(最高経営責任者)を務めるJochen Hanebeck氏は、「世界最薄のシリコンウエハーは、パワー半導体技術の技術的限界を押し広げることで、優れた顧客価値を提供するという当社の取り組みを証明するものだ。当社の超薄型ウエハー技術におけるブレークスルーは、エネルギー効率の高いパワーソリューションにおける重要な前進であり、脱炭素化とデジタル化という世界的なトレンドの可能性を最大限に活用するのに役立つ」と述べている。
Infineonは今回、厚さ20μmと、「大規模な半導体工場においてこれまでに製造された中で最も薄いシリコンパワーウエハー」(同社)の処理/加工に成功したという。Infineonは厚さ40〜60μmという薄型ウエハー技術で長い歴史を持つが、従来比では半分の薄型化となる。人間の髪の毛と比べると4分の1の厚さだ。
同社は同技術について、AI(人工知能)データセンターのほか、民生用、モーター制御、コンピューティングアプリケーションなどに向けた電力変換ソリューションにおいて、エネルギー効率、電力密度、信頼性の向上に大きく貢献するとしている。
ハイエンドのAIサーバアプリケーションでは、電流レベルが高まり、電力需要が増大するため、この技術は電力変換において特に重要となる。ここでは電圧を230Vから1.8V以下のプロセッサ電圧に下げる必要などがあるが、Infineonは今回の技術について、「縦型トレンチMOSFET技術に基づく縦型電力供給設計を強化し、AIチッププロセッサへの非常に近い接続が可能となり、電力損失を低減し、全体的な効率性を向上させる」と説明している。
ウエハー上のチップを保持する金属スタックは20μmより厚い。Infineonは、ウエハー厚を20μmまで薄くする技術的ハードルを克服するために、「革新的でユニークなウエハー研磨アプローチを確立する必要があった」と説明している。これは、薄いウエハーの裏面のハンドリングと加工に大きく影響する。また、ウエハーの反りやウエハーの剥離といった技術的/生産的な課題は、ウエハーの安定性や優れた堅牢性を確実にする後工程の組立プロセスに大きな影響を与えることになる。
Infineonは今回、厚さ20μmのウエハーの加工について「Infineonの既存の製造ノウハウの上に構築されている」と説明。製造の複雑さを増すことなく、新技術を既存のシリコン量産ラインにシームレスに統合可能で、高い歩留まりおよび供給の安全性も実現するという。
なお、今回の技術は、Infineonのインテグレーテッドスマートパワーステージ(DC-DCコンバーター)に採用され、既に最初の顧客に納入されている。同社は「現在、超薄型ウエハー技術を立ち上げていて、今後3〜4年以内に低電圧電力変換器用の既存の従来型ウエハー技術を代替することを期待している」と述べている。
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